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"いい投資"探検日誌 from 新所沢の過去ログ#1(2003年7月〜2012年3月までの記事)

まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか

ナシーム・タレブの『まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか』を読み終わりました。

続編のブラックスワンは新所沢では売ってなかったのでネットで注文しました。

帯にはウォール街のプロが顧客に最も読ませたくない本とありますが、確かにそんな本です。

インデックスに勝てるアクティブファンドが少ないというだけなら勝ってるファンドもあると言い返せますが、投資で儲かったのは「ほとんどの場合」運のおかげと論じられると、確実に反証できる事はできません。

凄いよ、この本。

トレーダーが書いたので金融関係の話題が多いですが、それだけではなく何故あの人は成功して自分はだめなんだろう?というのも『まぐれ』と一刀両断します。出世は運です。いつ来るかわからないチャンスをモノにできたかできなかったかの運。

とにかく、ほとんどの場合が運だとこれだけ強調されると確かに楽になる人もいるんだろうね。

成功した人からはそんなこたぁねーよと反論されるだろうけど。

投資の世界ではとにかくリスクを避けて市場に残る事が大事と訴えます。

派手にリスクを取って成功した人は、(たまたま)成功したらかビッグになったけど、もし失敗していたらどうなっていたかを考えて行動しないと駄目なんです。

終わりよければ全て良し、それが本当に終わりならいいけどまだ続きがあるのであれば良しじゃないよと。

リスクを取って結果的に成功していったトレーダーがある日考えられないような可能性の低い事象が起きて吹っ飛んでしまう。そんな事がウォール街では日常茶飯事だそうです。

実際LTCMも理論上ではほとんどあり得ない確率の事象が起きたので吹っ飛びましたが、彼らは自分たちは悪く無い、市場がおかしかったんだと非を認めませんが、吹っ飛んだ事は事実です。

逆に著者はよく負けるけど負けは小額で抑え、たまに大勝ちするポジションを取るそうです。そうすることで負けは帳消しされ、結果的に生き残れると。

また、著者は単純化を危険だと言っていますが、この本を読んで自分もそう思いました。

初心者向けの投資の本でよく単純化された内容が書かれていますが、初心者はそれこそが全てと思い込んでしまうところがあります。

アセットアロケーションを組むところまでは良いです。

でも、リスクについて最大損失を2標準偏差までと見込んでおけばだいだいOKと理解しておくとあっさりそれ以上の損失というのはやってくるものです。(実際に、過去20年で3回40%超の暴落が起きています)

確率はどんなに低くても、起きてしまった時にどうするかそこをしっかり見定めて投資しておかないと予期せぬ暴落に耐えきれず結果として市場から退場することになりかねません。

それはインデックスファンドに長期投資すれば大丈夫と信じている投資家であってもです。実際、50%もの暴落を経験して今回の相場で退場してしまった人もそれなりにいると思うんですよね。

著者は成功したら大きな儲け、少ない確率だけれども失敗したら大きな損失を出すような取引はいずれ少ない確率が起きて吹っ飛ぶ事になると警告しています。

トレードで成功している人もしっかりリスクコントロールしないといつか吹っ飛ぶ事になりそうです。

バフェットもよくわからないものに投資することこそがリスクだと話していますが、まさにその通りです。

この本を読むとじゃあリスクがない状態ってどんな状況だよ?って気分になってしまうのですが、長期投資を信じる個人投資家の場合は想定以上の下げ相場になっても市場に居続けられるだけの余裕を持ったポジションを持つ事が大事なんじゃないかと思いました。

地味なリターンでも市場に居続けられたら複利効果で大きく育ちますので。

今更ですがかなりのオススメ本です。