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"いい投資"探検日誌 from 新所沢の過去ログ#1(2003年7月〜2012年3月までの記事)

かいたくファンド運用報告会 IN 東京

昨日の夜、かいたくファンドの運用報告会 IN 東京に行ってきました。 既にrennyさんもレポートをアップしていますが僕も個人的な感想を書いてみたいと思います。 最初に7月までファンドマネージャーだった松本さんから今までの運用状況について報告がありました。 ちなみに現在は証券会社にも籍があり、マーケットの動きについてレポートを作成してかいたく投信へ提出し、かいたくファンドの投資政策委員会のメンバーとして運用について助言をしているそうです。 かつてはファンドを選ぶだけだったのでマーケットの動きをそこまで詳しくは見ていなかったが、現在は証券会社にいるのでより詳しいマーケット分析をするようになったと話されていました。 <日本について> ・民主党政権になるのが確実視される状況ではあるが、市場はそれに対してポジティブな見方をしていない ・4年前の選挙では海外からの買いが入ったが、現在は逆の状況 ・日経平均1万円というのは高い水準ではないが目先の日本株は期待できそうにない ・細川政権が発足した93年に状況が似ている。特に株価の動きも。93年は3月に底を付け、9月まで上昇し、10月から下げた。 個人的には93年に状況が似ているという話はよく聞くものの、ブラックスワンのタレブ流に言えば「たまたま」に過ぎない事だと思っています。過去から似た状況を探せばたぶんどこかに似た状況というのは見つかるものなので。 <かいたくファンドの運用について> ・優れたファンドを探してきて組み入れることで優秀な成績を残すファンド・オブ・ファンズではない ・過去のパフォーマンスが良いファンドという事ではなく運用者を信用できるファンドを選択した ・最初は日本、アメリカ、欧州、新興国の4地域へ国際分散投資を考えていたが、全ての地域を網羅できるまでファンドを選択しきれない中でのスタートだった ・エマージング株については状況を見ながらおそるおそる組み入れていた ・リーマンショック後はTMA長期投資ファンドを組み入れる事により日本株へも投資を開始 ・TMAは運用開始当初から見ていたがキャッシュポジションは自分でコントロールしたいため、フルインベストメントになるのを待って組み入れた ・世界の株式市場の成長の恩恵に乗った運用を心がけているので結果的に組み入れ銘柄は世界のそれぞれの分野のトップ企業が入っている ・どのファンドをどれだけ組み入れているかではなく、どの企業の株が組み込まれているかを見て欲しい ・マーケットタイミングを図るのは難しいのでドルコスト平均のように毎月少しずつファンドを組み入れる事で、ファンド運用者としてもドルコスト平均の威力を実感した ファンド購入者の方も是非ドルコスト平均法の威力を実感して欲しい ・テーマファンドを乗り換えるという従来の日本の投資信託とは違った形の投信を作る事ができたのではないかと思う ・いつファンド組み入れ比率を上げるんですか?という質問を受けるが毎月の新規流入資金をファンド購入にまわすことでじっくりとキャッシュポジションを引き下げて行く方針 僕も誤解していたのですが、かいたくファンドは世界から選りすぐりのファンドを選んで市場の状況に応じてアクティブに動く運用ではなかったという事がわかりました。 あくまでも国際分散投資をするけど世界中にリサーチ体制を整えるとコストがかかるから、投資先にファンドを使ってリサーチとかは任せてしまおうというシンプルな設計でした。 個人が投資信託を使って投資するのと同じですね。 そう考えるとコムジェストのカントンさんを呼んでセミナーとかやってた割にファンドをあまり組み入れない理由も納得できます。 「ドルコスト平均法の威力を実感して欲しい」と「どの企業を組み入れているかに注目して欲しい」という発言はレポートを見ているとそういう意味で書いていたのかというのが今更ながら理解しました。 僕も技術者なのでわかるんですが、かいたくファンドは職人気質なところがあって月次レポートでの一般の人への語りかけ方があまりうまくないですね。運用報告会などのセミナーで話を聞いてようやく理解できることが多いです。 大事なところは赤字にしてみましたが、確かにレポートでその事について書いてありますが何故書いているのか?というのが伝わってきませんでした。 最後に上原さんが寡黙なうちのファンドマネージャーが1時間30分も話せるんだろうか?と心配していたと言っていましたが、営業トークもしくは営業的なレポートを書く事が必要に感じました。 これはかいたく投信さんへ既にお願いしているのですが、HPの内容を充実させて自分たちの目指す運用について正しくわかりやすく伝える必要があります。 <世界の株価の動きについて> ・80年代は日本>米国、90年代は日本<米国、00年代は日本=米国だった ・何故こういう事が起きたかというとグローバルで運用する投資信託が増えた事により、これまで主に自国内の株しか買っていなかったマネーが世界中を循環するようになったからだと考えている ・組み入れ先のキャピタルも90年代にグローバル投資で成長した運用会社 ・下げ相場になると顧客からの解約代金の調達のために株を売る流れになり、その下げがさらに解約を生む悪循環に陥る ・結局世界中の市場は繋がっているので従来の国際分散投資というのは成立しないのではないか? ・そこで、個々の企業にフォーカスしたいと考えている ・かいたくファンドには食品や医薬品などの安定成長をする企業が多く組み入れられている ・世界のトップ企業に投資しているという事を実感して欲しい 次に新ファンドマネージャーの毛呂さんから ・かいたく投信が最後の仕事だと思うので「自分がしたくない事はしない」「信念に向かって愚直に進む」「ごく普通の人の長期的な資産形成の力になる」 ・ごく普通の人に向けて「複利の力」と「ドルコスト平均法」について強調していく ・長期に投資するのに値するプロダクトを選択するのが大事 かいたくファンドじゃなくたっていい ・複利で7%というのは難しいが夢物語ではない値。そこを目指したい ・毎年50万円を7%複利で30年運用すると5000万円になる ・7%の根拠は米国株が過去に7%で成長してきたことを考えても実現可能と考えているし、7%あれば投資家のニーズにも応えられる ・株式のリターンの源泉は企業利益の成長 先進国は今後1.5%〜3%程度の成長なのでエマージング市場への投資が必要 ・インドと中国は有望だと考えている 優秀な企業であれば10%の成長は可能ではないか? ・米国は30年周期でPERが天井をつける ・ベンジャミン・グレアムの割安基準からいくと現在の米国の益周りが6.8、長期国債利回り3.5%の倍程度で割安感が出て来た ・法則で買う事は難しいが現在は真ん中より下にいるのでコツコツ買うにはいいのでは ・しばらくもみ合って欲しい ・コムジェストは中国株にディフェンシブな銘柄を選んでいるのでいいファンドを選んだと考えている ・今回の金融危機の根源はアメリカ人が借金をしすぎたことにある 借金比率は2年前に急騰し、現在は修正中 目先はネガティブだが修正しているという事は長期的には回復すると見ている 新ファンドマネージャーの毛呂さんはあまりアクティブに動き回る感じのしない、まさにかいたくファンドに合ったファンドマネージャーだと感じました。 かいたくファンドじゃなくたっていいんだという発言には場内から笑いが起きましたが、いつ売ってもいいというひふみ投信と共に、誠実な発言だなと思います。営業さんからはまず飛び出ない発言でしょうけど。 また、運用については発言内容から考えると今後は市場の状況を見ながらエマージング株の比率が上がるのではないでしょうか? コムジェストのファンドも年間10%の継続成長が見込める企業へ投資という哲学ですのでかいたくファンドの目的に合致しています。 <最後の質疑応答で新規組み入れファンドや見直しはあるのか?という質問に上原社長の回答> ・継続して新しいファンドの調査はしているがブティック系運用会社は金融危機で痛んでいるのでしばらく新規は様子見 ・日本株に関してもTMA長期投資ファンドで満足している 独立系投信会社のセミナーだとファンドマネージャーの話が聞けるのがやっぱり大きいです。 既存投信会社だとセミナーで話すのが営業の人なんですよね。 話がわかりやすい反面、運用している人がどういう事を考えているのかダイレクトに伝わらない欠点があります。 逆にファンドマネージャーだと一般の人にわかりやすく話すというのが難しいところもあるので一長一短なのですが。 さわかみ投信の澤上社長のように運用担当といいつつも抜群の営業センスを持っているとまた別なのですが、苦労している独立系投信会社と成功している独立系投信会社の違いは「営業力」にあると感じました。 ファンドマネージャーさんが話してくれるのは誠実さを感じるし、僕も技術者なのですごく共感できるのですが世の中に広めるためには営業センスが必要です。 そういう意味ではかいたく投信では森本さんがものすごく熱意を持って語りかけていただけに監査役となって表舞台に出てこられなくなったのは残念に感じました。 かいたくファンドの月次レポートでは運用説明会の内容について書かれる事がないのですが、他の独立系投信会社のようにセミナーを開催したらその時の様子は簡単でもいいので報告はして欲しいと思います。(参加できなかった人のためにも)