この本は鎌倉投信と中小企業について共同研究を行っている法政大学の坂本教授の本です。
鎌倉投信での説明会で紹介された本でしたので、どんな会社が投資対象になるんだろう?という興味と、鎌田さんが語っていた企業像がイキイキとしていて魅力的に思えたので、じっくり本を読んでみたいという二つの理由でその日のうちに買って帰りました。
登場するのは本当に小さな8社です。
東京・吉祥寺にある小さな和菓子店「小ざさ」
広島県呉にある身障者・高齢者向け福祉衣料、寝具のトップメーカー「ハッピーおがわ」
北海道札幌にあるエコ名刺の「丸吉日新堂印刷」
栃木那須塩原にあるリピーター率73%という現代アートを取り入れた旅館「板室温泉大黒屋」
熊本県熊本にある県外からもワインを買いに来る「あらき」
東京・秋葉原にある高齢者限定人材派遣の「高齢社」
埼玉県志木にあるオリンピックで金銀銅メダル独占する砲丸を作る「辻谷工業」
島根県出雲にある福祉機器メーカー「キシ・エンジニアリング」
ハッピーおがわは高齢者向家に片手ですぐに脱げるように工夫したズボンや一人の女の子のために大きなサイズの靴下を作ったり、あくまでも利用者目線でものづくりをしています。しかも、その女の子用に特注で作っても値段は1,260円。
「開発コストがかかったからといって何万円もしたのでは、その人は買うことができません。それでは結局必要としている人が使うことができず我慢してしまう。」
ここまで顧客目線を徹底した企業はなかなかないと思います。
送料無料、サイズ直し無料というのも、凄いことだと思うのですが、社長曰く以前は背負って持っていった事を考えれば送料なんて安いものだそうです。
とにかく、相手にとって、困っている人にとって最もいいことは何か?をビジネスの根っこにしているのでぶれがありません。
また、札幌にある名刺屋さん丸吉日新堂印刷は社長以下社員三名、パート二名という小さな会社ながらペットボトル再生紙やとうもろこし皮、バナナの茎、ケナフ、間伐材などを利用したエコな再生紙を用いた名刺が売りで、リピーター率が90%、道外客が80%という業績も凄いです。
更には障がい者に仕事を回すという福祉活動の一環として点字付き名刺も作成しています。
点字加工は精神障がいを持つ人が手作業で行っているそうです。
先日訪問した鎌倉投信の皆さんもここの点字入りペットボトル再生名刺を使ってました。
この本でもP99にK投信という事でちょっとだけ登場しています。
鎌倉投信も中小企業情報を調査するアンケートを送る際に、封筒などは丸吉日新堂印刷へ発注し、ラベル貼りなどは近所の作業所から障がいを持つ人に来てもらって作業をお願いしたそうです。
自分も個人用ブログ名刺は丸吉日新堂印刷さんにお願いしてみました。
再生紙の種類は北海道出身という事でとうきび(トウモロコシ)皮の再生紙を選びました。
大通公園のトウキビ屋台から出るトウキビ皮から紙を作るって発想と実現してしまうところがスゴイ!
この他にも老舗温泉旅館が現代アートを取り入れた旅館に生まれ変わった話や、倒産寸前まで落ち込んだ酒屋が元々得意だったワインに特化して語りかけるように丁寧に営業するようになったら客足が戻ったなど、顧客本位ってなんだろう?と改めて考えさせられる会社が続々と登場します。
読んでいてワクワクするような事業をしている会社ばかりで、企業の大小では良し悪しは語れないなと実感します。
どうしても世の中では大企業=いい会社というイメージがありますが、小さくてもこんなにお客様に喜ばれている会社があるというのは
もっと多くの人に知ってもらいたい事実です。
きっと鎌倉投信が投資することになる会社もこういった話がたくさんある会社になるんだろうなという事で、そちらも楽しみにしています。