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"いい投資"探検日誌 from 新所沢の過去ログ#1(2003年7月〜2012年3月までの記事)

かいたくファンドの「いままで」と「これから」セミナー

昨日、麹町で行われた『かいたくファンドの「いままで」と「これから」』と題されたセミナーに行ってきました。

かいたくファンドの創業者の森本さん (@shinjimoromoto)が復帰したことに伴うかいたくファンドをもう一度改めて見なおしてみると共に今後の新しい動きについての内容です。 かいたくファンド 仕事の関係で途中からの参加でしたが、しっかりとした資料と まっき〜さんの議事録のおかげで最初の30分の話もわかりました。

かいたくファンドのコンセプト  

 

  • 中間層の資産形成に特化  
  • 中長期的に資産を大きく増やすため株式投資
  • 世界投資に特化  
  • 相場の下げ局面に強いファンド  
  • キャッシュポジションのコントロールによりリスクを管理  
  • 直販の顔の見えるファンド

 

中間層の定義について参加者から質問がありましたが、かいたくファンドの投資家の実に75%が30代だそうです。 かいたくファンドが対象と見ているのがまさにそこで、年齢的な意味での中間層になります。(資産での中間層ではない)

設定時のロイターのインタビュー記事(こちら)でも20-30代の働く層をターゲットに据えるとありました。 相場の下げに強いファンドという点では、組み入れているファンド自体が景気循環に乗らないものにしているので、かいたくファンド自体も景気の波で激しく上げ下げしないようになっているという事でした。

リスク管理についてはファンドの景気敏感度をウォッチしていて、相場の動きに応じて組入比率やキャッシュポジションを調整しているという事でした。また、株式には20年〜30年周期の大きな波があり、その下げをどう逃れるかが長期投資において大切であまりガツガツしない運用を心がけているそうです。

かいたくファンドのミッションとビジョン ミッション:

ファンドを通じて、お金の流れを変え、市井に暮らす人々の暮らしを豊かにするお手伝いをする

ビジョン:

かいたくファンドの基準価額が、10年後に2倍、20年後に4倍になることを目指して、ファンドに信頼を寄せ、資産を託してくださったお客様に対し、経済的な豊かさをお届けする。

こちらも先のロイターの記事で森本さんが答えていたことの繰り返しです。設定時からブレてません。

ビジョンに基づいた運用方針 長期投資の鉄則:

ルールその1 絶対に損をするな

ルールその2 絶対にルール1を忘れるな

運用方針:

長期投資を貫くため、短期的に大きく儲けるよりも、取り返しの付かない大きな損失を出さないことに注力する ここの鉄則はバフェットが言っているものですね。 組入ファンドにもバフェット流投資を愚直に実行しているコムジェストが入ってますし、そもそもバフェット好きでバークシャーのB株ホルダーの僕にはしっくりくるものです。

普通の人に長期投資を継続してもらうためには相場の流れにのった大きな値動きよりも、リターンは一部損なわれても大きな損失を回避する方がいいと考えているという点はこれまであまり語られなかったので、今後は声を大にして言った方が良いと思います。

長期投資を実践する上でのキーポイント

先進国  ・少子高齢化  ・大量消費から少量高品質な消費への転換  ・技術革新  投資先としてはヘルスケア、ブランド、IT、次世代技術など 新興国  ・人口増加  ・今後の世界経済成長の中心  ・中間層の拡大  投資先としては社会インフラ、エネルギーなど 人々の消費行動は生活者一人当たりGNPで推し量ることができるそうです。

700ドル→テレビを購入 1,000ドル→冷蔵庫を購入(800ドルでは誰も持っていない) 3,000ドル→バイク 5,000ドル→都市型消費者となりローンを利用する 10,000ドル→自動車、海外旅行、生命保険 それ以上→投資信託、年金 例としてベトナムで投信や生命保険などをやろうとしてもまだ人々がそこまで意識が向いていないのでビジネスとして難しいという話がありました。

テレビ→冷蔵庫→バイク→自動車→海外旅行なんて流れはまさに日本が高度成長期に体験してきた道ですね。

長期投資を担う投資対象 ここでかいたくファンドが組み入れているファンドの運用会社紹介がありました。

コムジェスト・グループ

・ジャン・フランソワ・カントン氏が影響を受けたウォーレン・バフェットの運用哲学に基づいた運用を目指して25年前に設立した独立系運用会社。 ・2010年現在の運用資産は1兆円を超えている。

・新興国、欧州株投資でヨーロッパNo1の運用実績 ・新興国では社会インフラ、生活必需品、インフレヘッジに、欧州では生活必需品やヘルスケアに投資しており、同じ投資哲学でも投資先が異なると組入銘柄は変わってくる

・元々はNYタイムズかワシントン・ポストに澤上さんの記事が載ったのを見てカントンさんから澤上さんにアポイントがあった。長期投信について意気投合し、日本法人を設立。他にも投資したいという声は来ているが、日本では長期投資ファンド向けだけに特化している。

キャピタル・グループ

・1931年創業でバンガード、フィデリティと並ぶ世界最大級の独立系運用会社 ・アメリカの投信残高トップ10のうち4本が同社のアメリカンファンドシリーズ ・マルチマネージャー制をとっていて、それぞれのファンドマネージャーが30〜40銘柄を運用することで運用成績の悪化を防いでいる

・ただし、金融危機でだいぶ痛みを負ってしまい、最近の運用成績は奮わない

TMA長期投資ファンド

・ファンド名に「長期投資」がついた日本唯一のファンド ・金融史オタクといっていい程詳しい平山さんがファンドマネージャー

・新興国はエネルギーと食、成熟国はわくわく生活をキーワードに投資 カントンさんの話は一度だけ聞いたことがありますが、バフェット・ウェイを実践しているだけあって自分にとっては本当にタメになる話でした。

そしてTMA長期投資ファンド。 日本に「長期投資」と名の付くファンドがこれ一本しかないというのは寂しいなと思いましたが、平山さんもこれまた金融史を絡めた話がタメになるし楽しい人です。 キャピタルは金融危機前は優れた運用会社という事を聞いていたので最近の成績はちょっと残念なのですが、これだけ選りすぐりのファンドが組み合わさったかいたくファンドをパッケージとして僕はとても気に入っています。

運営面で荒削りな部分があったのは否めませんが、それでも継続して買い続けているのは中身がいいと思っているからです。

かいたくファンドのこれからの運用

・アセットアロケーションはバリュエーションに基づき決定。キャッシュポジションを使ってリスク管理を行う。

・成長性の高い企業を割安な株価で投資する運用スタイルのファンドをこれからも探す ・組み入れることでファンドのパフォーマンスが向上するファンド

・一般の個人が購入できないファンド

・一貫した投資哲学と規律ある運用手法を持っているファンド

かいたくファンドのアセットアロケーション

世界の時価総額などを参考に成長の見通しに比較して割安に評価されている地域への配分を厚くする 欧州株をじっと我慢して組み入れ比率を抑えてきて、最近のユーロ安で買い出動したようにじっくり腰をすえて割安になったところで購入するというのをしっかりやっているファンドだと思います。

予め比率を決めてそれに基づいて投資するのがファンドオブファンズと誤解している人がファンドオブファンズ否定派には多いのですが、そんな事はないというのはもっと世の中にアピールしていいと思います。 相場の見通しが外れたらどうするんだ?という反論が来るとは思いますが、アクティブ運用とはそもそもそういうものなので。

また、今の投資本がアセットアロケーションを決めて、それに準じた投信を買いましょうというところにあるので、相場の割安度を判断して配分を変化させるという運用をどうアピールしていくかという点も考える必要がありそうです。 また、個人が買えないファンドにこだわるという事でしたのでコモンズの組入はなさそうですね。

最後にこれからの施策という事で10月にHPの刷新やWebテレビを開始するといった事が案内されました。 月次レポートにもありましたが新規組入ファンドも継続して探しているそうです。 また、クローバー・アセットマネジメントですが合併と新たな資本参加(澤上さんや新社長の今野さん)により土台がしっかりしたのでこれからは攻めていける体制になった、それは大きいという話もありました。

感想

森本さんが復帰されてかいたくファンドにまた活気が戻ったように感じました。 これまで正直に言って運営面でいくつか不満もありましたが、また、かいたくファンドで頑張っていただけるという事ですので応援します!

自己紹介タイムで毛呂さん(@Mororiin)が話されていた、昔は自社株購入や金銭信託で元本保証の金利7%などと資産形成に向いたツールがあったが、今の時代にはそういったものがないので長期投資が必要だという話をされていましたが、かいたくファンドが新しい販売用資料を作成するのであればそういった視点で作成するのが良いんだろうなと思いました。 組入ファンドは素晴らしいファンド達ですが、直販投信がターゲットにしているのは投資にこれまで興味はなかったけれども、どうしたらいいかわからないという人たちだと思います。

その人達にいきなり商品のスペックを説明するよりもその商品が持つストーリー性を語った方がいいと思うんです。アップルの商品の売り方もそうなのですが。 月々積立ができて、大きく損をしないように気をつけて運用をしています。 実際に金融危機の時はこんな感じでしたという例を交えて月々積立を継続することであれだけの下落の後でも、プラスに転じることができたというのはそんな人達にとって魅力的な商品に見えるのではないでしょうか?

投資というと、自分でタイミングを見て買ったり売ったりしないといけないので難しいと思っている人たちに、そうじゃない投資スタイルもあるという事を伝えられれば。 20代、30代は先行き不安な世代でお金に対して保守的ですが、ライフネット生命のように納得できる良さがあればしっかり買ってくれるし、口コミも期待できるはずです。

最後に良いことだけではなくキツメな事を書くと、かいたくファンドのコンセプトに「直販の顔の見えるファンド」とありましたが、ここしばらくはあまり顔が見えないファンドでした。モノはいいけど説明が下手な職人気質なファンドになっていたように思えるので、マーケティング面での強化には期待しています。

あとは、社長が交代したこと、ファンドマネージャーが交代した事などは速やかにオフィシャルな方法で広報して欲しいです。 大手の投信会社ではいちいち社長が変わったことをHPで告知しないかもしれませんが、申し訳ないけれども運営面でまだ心配される規模の会社ですので、経営陣の交代のような大切な事は速やかに発表して欲しいんです。

直接株式を購入はしていないけれども、IR的な考え方からすると決して無茶な希望じゃないと思うんです。 ファンドマネージャーの交代についても月次レポートを見ていると名前が消えたなぁと思って数ヵ月後の運用報告会で実は今は籍が無いと言うのではなく、代わりましたとしっかりレポートで報告して欲しいです。これは運用委員会で運用方針を決めるから大きな影響がないとかそういう事ではありません。

マーケティング面とともに、そういった運営面での荒削りな部分は既存のホルダーにとって知りたい情報ですので、隠しているつもりはないのでしょうが、しっかり広報をお願いします。 それでこそ顔の見えるファンドです。 かいたくファンドの再出発に期待しています!