つみたて投資のバイブル
半値になっても儲かる「つみたて投資」 (講談社+α文庫)
星野泰平
著者の星野泰平さんから献本いただきました。
ありがとうございます。
この本は特殊です。
毎月一定額つみたて投資をすることでどういった事になるか?というのをわかりやすく8つの効果で解説しています。
完全に金融機関から独立して「つみたて投資」の効能を多くの人に知ってもらいたい、その想いだけでできています。
つみたて投資を徹底的に研究し、こんなにわかりやすく解説しているという点で個人的には今年のベスト投資本だと思ってます。(献本していただいたからという訳でなく、本気で思ってます)
「まとまったお金を持っていない普通の人が毎月無理のない範囲でつみたて投資をする」というのが、普通の人にとって一番心地よい投資スタンスだと自分も思って実行しているだけに、この本はハマりました。
まず本の帯にも登場するV字型のグラフが秀逸です。
1万円の投資信託が7年後に2,000円になり、その後もちなおして10年後に5,000円というひどい商品の例です。
最初にこの投信を買うと10年後に半分になってしまいますが、10年間毎月1万円ずつ、つみたて投資しているとなんと元本120万円に対して139万円になります。
一旦8割損して、5割に戻っただけでもつみたて投資ならプラスになるんです、
プロローグではこのような例を使って、これまでの投資について無意識に思っていた常識「安く買って、高く売る」に変わる新しい常識「長い時間をかけて口数を積み上げる」を説明しています。
下がってもすぐに元本が回復する
いつ初めてもいい
最後の価格が大事
などなど、つみたて投信のエッセンスが一杯です。
預貯金での積立は経験されている人も多いと思いますが、残念ながら現在の利率では預貯金の積立による資産増の効果はほとんど現れません。
そこで投資信託を使った自分年金の作る方法として積立投資を紹介しています。
8つの特徴の中ではつみたて投資のメリットだけでなく、ちゃんとデメリットも説明されていますが、下落しても安心して投資を続けられるように、つみたて投資の特徴を書いています。
暴落の度に個人投資家が投資を止める姿を見てきた身としては、この本の内容を知っていてくれればリーマンショックの後も続けられたのかもなと思うばかりです。
ネット証券を中心に使っていると積立投資って一般的な気もしますが、実はほとんどの証券会社が積立投資について案内をしていません。
積立投資は証券会社にとって儲からないというのは著者自身の経験としても書かれているからなのですが、若年層が資産形成をするためには失敗しにくい「つみたて投資」が向いていると思いますし、自分も実践しています。
これまでの投資本はつみたて投資による効能をここまで明確に解説したものは無かったという一点でこの本の価値はあります。
また、つみたて投資では資産配分の効果は一括投資ほど顕著に現れないという点はセミナーで始めて聞いたときに目からウロコだった点です。できれば、値動きがあまりない方が安定した成績が残せるので、若いから株を多めにというこれまでの常識が覆された気がします。
気になった点といえば、あえて具体的な商品を出さずに解説しているのはいいのですが、ぜひ書いて欲しかったのは分配金についてです。
このグラフは分配金は再投資する前提になっていますが、今の世の中の流行は分配金の多い投資信託。
実際にネット証券のランキングを見ても若年層が毎月分配型を買っていたりします。
資産形成をする上では分配金はマイナスというのは書いてあって良かったのでは。
この本は投資を始める際、始めて読む本ではないかもしれないけれども、初心者のうちに読んでおいて欲しい本です。
図解版の企画もスタートしているとチラッと聞きましたが、これは図解版でこそのコンテンツでしょう。
巻末の参考資料は初心者向けではないかもしれませんが、とても興味深いデータが一杯です。
この本に出てくるグラフなどは投資教育などで無償で使えるように公開されています。(こちら)
自らの研究の成果を抱え込まず、みんなに広めてもらう。この気風のよさも星野さんの魅力です。
十章では自らのバックグラウンドを熱く語っていますが、そんな人だからこそつみたて投資をこんなに研究できたんでしょうね。
次の夢はアメリカでの出版という事で、まだまだ星野さんには頑張って欲しいです。
目次
プロローグ 「安く買って高く売る」に縛られすぎた日本人
第一章 「値下がり安心」効果
第二章 「スピード回復」効果
第三章 「リバウンド」効果
第四章 「ストレス抑制」効果
第五章 「タイミング・フリー」効果
第六章 「プロセス回復」効果
第七章 「継続」効果
第八章 「予測不能」効果
第九章 何のためにつみたて投資をするのか?
第十章 つみたて投資研究記
終章 つみたて投資とはどういう投資か
参考資料 1.論より証拠 つみたて投資1000回やってみました
2.いくらになるか 実際、どの程度貯まるのか
3.本書で解説したシミュレーションの結果一覧