2011年1月の『ひふみ投信』
レオス・キャピタルワークスのひふみ投信の月次運用報告書(ひふみのあゆみ)が公開されています。(→こちら)
◆1月末の状況◆
純資産総額:12億0,500万円
組入銘柄数:59
株式比率 :90.41%
現金比率 :9.59%
※ファンド情報はこちら
ひふみ投信の1月のパフォーマンスは+3.58%でした。(参考:TOPIX +1.26%)
1月は短期的に過熱感のある銘柄を一部売却したため上位銘柄が入れ替わっています。
12月に1位だったスタートトゥデイ、2位のドワンゴ、10位のインフォテリアはいずれも圏外へ。
ポジションをクローズしたのではなく、短期的に上がりすぎたと判断して一部売却という事でした。売却資金で購入したのは内需で成長が見込めるセクターの会社です。
◆セミナー情報◆
ひふみ投信のセミナー情報はこちら
※下記に紹介した以外にも外部主催のセミナーがあります。
2月22日(火) ひふみサロン ゲスト:平林亮子さん
3月8日(火) ひふみアカデミー(月次運用報告)※Ustreamによる中継、録画配信あり
3月13日(日) ひふみサロン@名古屋 ゲスト:尾上 堅視(かえる_オノウ。) さん
3月21日(月) ひふみサロン@大阪
今月はひふみサロン(月次運用報告会)に行ってきて、そこでレオスの運用哲学なども聞けました。
◆レオス・キャピタルワークスの運用哲学◆
今回のひふみアカデミーではレオス・キャピタルワークスの運用哲学という事で目論見書に書いてある事だけでなく、HPでは年金・金融機関の皆様への方に書いてある部分についても説明がありました。
・アクティブ主義
・フレキシブル投資
・見えない価値を見つけるチカラ
・アートとサイエンスの融合
この中でも「アートとサイエンスの融合」がキモだと感じました。
見えない価値を見つけるチカラは口では説明できなかったり、なかなか見える化が難しい点もあるけれども、できる範囲で仕組化した上で、尚且つそこだけに拘らずアナリストの感性や技能も大事にしている点です。
バランスが難しいと思いますが、運用の最終判断は最高投資責任者の藤野さんの決定によって行われます。
また、藤野さんが起業した会社だけに中小型株への熱い思いも感じます。
時価総額500億円以下の会社では30%しかセルサイドアナリストの調査対象に入っていないために価格形成の歪みがあり、そこを狙っています。
低成長時代に入った日本でどうやってパフォーマンスを上げていくか?
新しい運用体制を構築中という事でそちらの説明がありました。
レオスの運用チームは5名ですが、草食投資本で6人目のロボット君として紹介されたRSM=レオス・スコアリング・モデルが最近若手アナリストが手を加える事によって運用成績の改善が図られたとの説明がありました。(RSM2.0)
RSM2.0の成果は既にひふみ投信でも実際に上位に組入れられたりもしています。
会社訪問による企業調査に関する説明では、個人投資家が会社四季報によるスクリーニングをしていてもバリュートラップにハマってしまうので、そこを別の観点で救う必要があるという話も出ました。
会社訪問の結果はレポートにまとめた上、運用部のミーティングで報告されます。
レポートだけではなく、アナリストがその会社をいいと思ったならそれを第三者が聞いて共感できるようでなければ、採用されることはなく、結果的にはそれが正解の場合が多いそうです。
インプットされたものを整理して「書く」というアウトプットだけでなく「説明する」というステップを踏むことで、情報の精度が上がるんだなあと、個人投資家では欠けてしまいがちな点が勉強になりました。
これは投資だけではなく、仕事の面でもそうなんですよね。
RSMと企業調査の結果特定のセクターをまとめて買う手法(底引き網と表現されていました)と、いいと思った会社を一本釣りする方法を両立で運用されています。
一本釣りに関してはバフェットの「一つの籠に卵を盛って、注意深く見張る」方式だそうです。
◆ポートフォリオについて◆
現在のひふみ投信は内需/成長株と外需/成長株の50:50による為替に対してニュートラルなポートフォリオで構成されています。
両者の比率は今後の相場の見通しによって変化します。
設定当時は内需/成長株の比率が高かったですが、徐々に外需/成長株比率が上がり、現在は50:50になっています。
この辺りはトップダウンアプローチの考え方で、これから株価が上がりそうなテーマについてはボトムアップアプローチで銘柄選択をしているようです。
現金比率の調整もトップダウンアプローチの考え方ですね。
最近徐々に現金比率を上げて下げへの備えを進めています。
◆組入れ比率について◆
ひふみ投信の組入れ銘柄の比率でその銘柄に対する見方をある程度読み取れます。
2〜3%程度:強気
1〜2%程度:やや強気
1%程度 :ニュートラル
1%以下 :組入れ初期もしくは売却中
株価が短期的に過熱した銘柄はポジションが1%程度のニュートラルゾーンへ調整されることが多いです。
※これは今回ではなく以前ひふみアカデミーでお聞きした内容です。
◆株価が短期で過熱した銘柄の売却について◆
長期投資の話になると、株は短期的な値動きを気にせずバイアンドホールドするという考え方があります。
ひふみ投信は守りながら増やすという方針があり、過熱した銘柄は急落のリスクを持つため、一部売却します。
一部売却することについて、バブルはその会社にとってもお客様にとっても良くない事なので適正な株価形成のためにも売るべきだという考えを聞きました。
草食系投資といいつつ短期売買をしているという見方もあると思いますが、現金比率から組入れ銘柄まで運用者が自由に振る舞えるように設計されたファンドですので、丁寧にポートフォリオをメンテナンスしているという事だと理解しています。
◆銘柄数について◆
ひふみ投信の組入れ銘柄数が微増していてる事について質問がありました。
今は10億円なのでこの程度の銘柄数で済んでいるが、100億円、1000億円になったらその時はそのサイズにあった運用の仕方がある。
1000億円になったら厳選した大型株+中小型株というスタイルにしないと市場へのインパクトで身動きがとれなくなるだろう。
1000億円も集める前にクローズしてしまうというのも選択肢の一つだが、まだそんな事を話せるような資産規模ではないがという事でした。
また、銘柄数が増えればインデックスに近似するというのは誤りで、本来は違うとピーター・リンチのマゼランファンドを例に説明されていました。ピーター・リンチは700銘柄もの数に投資していましたが、それはインデックスとは違う値動きをさせるためでした。
◆感想◆
ポートフォリオに攻撃と守備を含める、短期的に過熱した銘柄は一部売却などなど、自分が個別株売買をしていた時には資金が小さすぎて意識する必要もなかった点について勉強になりました。
攻撃と守備については個人投資家でそこまでする必要があるかは人それぞれだと思いますが、ひふみ投信は「いつ買って、いつ売ってもいい」「守りながら増やす」というキーワードがありますので、ボラティリティの抑制と基準価額の急落には特に注意を払っていると感じています。(現金比率の動きからも)
持株のポジションを調整することでポートフォリオのリスクを調整するというのは、個人投資家ではその算出がなかなか難しいと思いますが、そういう点もプロならツールを使って計算しているだろうし、プロならではの出来ることかなと感じます。
山崎元さんもリターンは過去の数値をアテにできないが、リスクと相関係数はある程度目安として計算できると話していましたし、投資家としてはリスクをいかに許容範囲に抑えるか?だと思っていますので、そこは魅力に感じます。
最近基準価額の上昇が急でリスクが高まったかな?と感じていたのですが、現金比率を少しずつ上げながらあのパフォーマンスを出していたと知り、驚きました。
また、新日鉄と住金の合併話は外国人投資家が日本を見直すキッカケになり、小型株有利な相場から大型株有利な相場への変化の可能性について話していたので、来月はまた違った組入れ上位陣となりそうです。