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"いい投資"探検日誌 from 新所沢の過去ログ#1(2003年7月〜2012年3月までの記事)

大和マイクロファイナンスファンドとカンボジア3-2の比較

大和証券が公募投信としては初のマイクロファイナンスファンドを販売しました。 公募投信以外ではミュージックセキュリティーズがNPO法人Living in Peaceが企画したマイクロファイナンスファンドの販売を既に行っています。
(現在カンボジア3ー2の募集中) そこで、両者を比較してみたいと思います。※2/19 一部更新しました

投資家が投資しやすい金融商品としてリスクを分散(軽減)したのが大和マイクロファイナンスファンド(以下大和MF)、マイクロファイナンス機関への投資を通じて現地の人を支援したいというプロジェクトファイナンスに近いのがカンボジア3−2という感じになっています。

1.投資スキーム

大和マイクロファイナンス・ファンド:
大和証券が販売した大和MFの資金は運用会社の東京海上アセットマネジメントへ、東京海上アセットマネジメントはDWMアセット・マネジメントが運用する「DWMマイクロファイナンスファンドJークラスJ」を購入(ファンド・オブ・ファンズという仕組みです)
DWMアセット・マネジメントはDWMマイクロファイナンスファンドを通じてマイクロファイナンス機関(MFI)への融資(25%〜50%)やマイクロファイナンス関連の国際機関債(50%以上)を購入します。 現地MFIに直接融資されるのが25〜50% 残りの50〜75%は国際機関債券を通じたマイクロファイナンス機関への関与となります。

カンボジア3−2
NPO法人Living in Peace(以下LIP)がフィリピンの大手MFIのCARDと提携し、中小規模のMFIを紹介してもらい、事前調査の結果投資対象をカンボジアのセイラニティに決定しました。
投資対象が決まったところでミュージックセキュリティーズにファンド組成の企画を持ち込み、ミュージックセキュリティーズがファンドの組成、募集を行う事になっています。 現在、ミュージックセキュリティーズが投資家からファンドとして資金を集めており、募集金額に達したら取扱手数料を差し引いた残りの金額をカンボジアのMFIセイラニティにドル建で送金(融資)します。
LIPは企画だけではなく、ファンド組成後もセイラニティの財務状況を含む定期的なチェックとレポート作成、投資家向けサービスを実施します。 カンボジア3-2で現地MFIに届くお金は94.5%です。

大和MFがMFIへの融資を25%〜50%としているのは、解約があった場合に都度MFIから融資を引き上げる訳にもいかない(それはMFIにとってもその先にいる新興国の貧困層にとっても迷惑なこと)という事で、流動性があり、いつでも現金化できる金融商品である債券への投資を組み合わせたと思われます。
(実際には大和MFが直接MFIへ融資するのではなくDWMのファンドへの投資なのですが、ファンドがMFIへ融資するという性質上、解約には制限があると思われます。) こうすることで直接MFIに届くお金は少なくなりますが、いつ買っていつ売ってもいい公募投信として形を整えたのではないでしょうか? その方が日本の投資家にとって買いやすい商品に仕上がるためです。

1,000円からの購入という点にもそういった意思が感じられます。 また、債券投資の部分もマイクロファイナンスに関連する国際機関債にすることで、できるだけマイクロファイナンス機関へ資金が流れるように設計されています。 カンボジア3-2の場合はカンボジアのMFIへ完全に融資してしまう為、日本の投資家の都合で途中で一部融資を回収するという事ができません。そのため途中解約できない仕組みになっています。

どちらがいいか?というのではなく誰でも参加できるような金融商品として仕上げた大和MF、現地の人を3年間しっかり支援したいという想いから作られたカンボジア3-2という事で、アプローチの仕方が違うだけで根底の想いは一緒だと思います。

 2.販売方法

大和マイクロファイナンス・ファンド:
大和証券が販売。窓口だけでなくインターネットからも購入可能。  購入にあたっては事前に大和証券に証券口座を開設する必要がある。

カンボジア3−2:
ミュージックセキュリティーズが販売。インターネットを通じた販売のみ。  購入にあたっては事前にミュージックセキュリティーズに登録が必要。  入金は銀行のネット決済もしくは振込。

3.投資対象国

大和マイクロファイナンス・ファンド: 
新興国に幅広く分散投資(予定)

カンボジア3−2:
カンボジアのMFIセイラニティ チャンカールー支店への投資(詳しくはこちら

 

ミュージックセキュリティーズ主催セミナー参加者のブログ記事 新興国のMFIやマイクロファイナンス関連の国際機関債券に幅広く分散投資される大和マイクロファイナンス・ファンドに対してカンボジア3−2はカンボジアのチャンカールーの人々へのマイクロファイナンスを通じた自立支援という形になります。

4.コスト

大和マイクロファイナンス・ファンド: 

購入時手数料 3.15%(税込)
信託報酬   年1.9765%(税込)程度
その他費用  年0.0105%(上限63万円)

カンボジア3−2:

取扱手数料  5.5%※購入時

カンボジア3−2は購入時に手数料を引いた後は全て現地MFIへ送金されるので1年半以上の投資ではカンボジア3−2の方が低コストという事になります。ただ、投資対象が異なる為、結果としてどっちがリターンを出すかは別問題です。

5.最低投資金額など

大和マイクロファイナンス・ファンド: 

最低購入金額 1,000円以上1円単位(上限なし)
信託上限   1,000億円まで(当初募集では500億円)
途中解約   あり(特定日以外の毎営業日)
募集期間   2011年2月14日から運用終了まで
運用期間   2011年3月1日から2021年2月23日まで

カンボジア3−2: 

最低購入金額 一口3万円より一口単位(最大33口/99万円まで)
募集金額   1,056万円(352口) ※現在募集金額の60% 
途中解約   不可
募集期間   2010年12月28日から2011年3月28日まで
運用期間   セイラニティの口座に送金した翌月1日より2013年12月31日まで

大和マイクロファイナンス・ファンドは最低千円から購入できていつでも換金できます。 カンボジア3−2は一口3万円で途中解約ができません。また、募集金額が設定されていて上限に達すると募集を終了します。

また、運用期間は大和マイクロファイナンス・ファンドが10年、カンボジア3-2が3年になります。

6.決算・分配

大和マイクロファイナンス・ファンド: 

年2回(2月23日、8月23日)  収益分配方針に基づき分配(分配金受け取りコースと分配金再投資コースあり)

カンボジア3−2: 
年1回(12月31日)  セイラニティの収益に応じて分配(分配金払出は翌年7月2日)

7.リターンの源泉

大和マイクロファイナンス・ファンド:
DWMファンドへの投資によりMFIへ融資が行われ、そのリターンが投資家へのリターンとなります。 新興国の通貨にて融資が実行されるため、様々な通貨に対して為替リスクが生じます。
新興国通貨ベースで国際機関債の過去リターンは7.0%、MFI向けローン債権の過去リターンは10.7%です。(販売用資料P10より) DWMアセット・マネジメント社は1994年に設立されたマイクロファイナンス専門の運用会社で、主に機関投資家向けのファンド組成や開発、信用力調査などを行っています。
MFIの平均貸し倒れ率が全体では2.0%に対して、DWMアセットマネジメントが選定したMFIでは1.2%となっています。

カンボジア3−2: カンボジアのMFIセイラニティのチャンカールー支店の業績に応じてリターンが算出されます。(下の分配シミュレーション参照)
なお、米ドルで融資するため米ドルベースでの為替リスクがあります。(カンボジアリエルに対しての為替リスクではありません)
分配シミュレーション   カンボジア3-2はカンボジアでの事業に融資されますが、MFIへの融資は米ドルベースで実行されるため米ドルベースでの為替リスクを取ることになります。(紛らわしいですが)

8.その他

大和マイクロファイナンス・ファンド:
公募投信のため、いつ買っていつ売ることも可能です。流動性が確保されていて千円から投資できるという事で、寄付ではなく、投資という形で社会貢献してみたいという人がまず最初に手がけてみる一歩となるファンドではないでしょうか? (マイクロファイナンス機関への投資を公募投信という一般の人の手の届く形で実現するための工夫が見られます) DWMが選定するMFIは貸し倒れ率がMFI全体平均2.0%よりも低い1.2%という点から考えて各国の大手MFIへ投資すると思われます。

新興国のMFIに幅広く投資されるので具体的にどこの地域の役に立ったというイメージは湧きにくいかもしれませんが、例えばユニセフへの寄付のように大手MFIへの投資によって幅広い地域で自分のお金が役立ったと考えることができます。 反面、投資信託として見た場合は購入時手数料や信託報酬が高めです。

MFI投資の想定リターンは高いのですが、新興国に投資しているので為替リスクも高くなっている事に注意が必要です。 カンボジア3−2と違って投資対象が分散されているので、ある程度カントリーリスクは軽減できます。

社会貢献はしたいけれどもリターンも大事、最低3万円はちょっと手が出ないという方はこちらの方が向いていると思われます。

カンボジア3−2:
カンボジアのMFIセイラニティのチャンカールー支店への投資という形で、どこに投資するのか明確になっています。 このファンドに投資するとカンボジアのチャンカールーの人々に自立のチャンスが生まれます。 そして、一口3万円からの投資で運用期間も3年間と短めです。 LIPが選んできたセイラニティというMFIを通じてカンボジアの人々の経済的自立を支援したいと思うかどうか?そこにこのファンドの意味があります。

他にも投資家を対象にしたスタディツアーや現地の様子を伝えるニュースレター、マイクロビジネスアワードなどの公募投信では得られない特典もあります。 大和マイクロファイナンス・ファンドをユニセフに例えるならこちらは地域に根ざした活動をする小規模NGOのようなものです。

どこにどんな活動をしたかきめ細かく知ることができます。 実際のところ、LIPはなかなか資金が集まらない中小規模のMFIへ資金提供を行うことを目的にしており、まとめてお金を集めて各国に振り分けるファンドでは目の届かないサイズのMFIへ資金を提供することができます。 途中解約ができないなど不自由な面もありますが、カンボジアのマイクロファイナンス、マイクロファイナンス利用者を支援したいという想いに共感できたならこちらが向いていると思います。(米ドル建のため為替リスクはこちらの方が小さいです。)

あと、分配シミュレーションを見てもわかるように大儲けが狙えるようなファンドではありません。

9.まとめ

どちらのファンドもアプローチこそ違えどマイクロファイナンスを通じて途上国の貧困層が経済的自立を果たすためのお手伝いをしたいという根底の想いは一緒です。

大和MFでは千円から買える、いつでも解約できる公募投信という形にするために色々工夫していますし、LIPが企画したカンボジア3-2もなかなか資金調達が難しい中規模MFIへ資金を提供しようとして工夫しています。

それによって大手ではカバーしきれない田舎にも支援の手が届きます。 どちらも素晴らしいファンドですので、寄付ではない形で支援したいという気持ちをお持ちの方は参加して欲しいです。

一つだけお願いは大和MFはいつでも解約できるとはいえ、途上国のMFIへ資金提供してその先にいる貧困層を支援するのが目的です。 短期売買を繰り返すのはやめてほしいなという事だけです。 長期的目線のお金が徐々に増えていくファンドに育って欲しいなと思います。 そしてLIPが企画するマイクロファイナンスファンドについても、これからベトナムのMFIへのファンドなども企画されていますので、参加者の輪が広がって欲しいと思います。

関連HP

大和マイクロファイナンス・ファンド(大和証券)  

マイクロファイナンス貧困削減ファンド(ミュージックセキュリティーズ)