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"いい投資"探検日誌 from 新所沢の過去ログ#1(2003年7月〜2012年3月までの記事)

コモンズ30塾「長期的集中投資の醍醐味」

昨日開催されたコモンズ30塾は野村総合研究所の堀江貞之さんによる「長期的集中投資の醍醐味」というお題でした。 堀江さん、普段は期間投資家向けに、ベンチマーク運用をやめてはどうか?というお話をされているそうです。 自分の場合、最初に投資を始めるにあたって勉強したのがバフェットの投資手法だったので、長期目線で集中投資するというのはまさにツボにはまった話でした。 お話の要点としては下記のような内容でした。
  • 世界の中の日本を考えると、今後国全体が成長していく可能性は低いと考えている。そういった環境ではベンチマーク運用という全体の流れに乗っても良いリターンはでないのでは?
  • 2001年〜2010年にTOPIXは-30%だったが、東証一部銘柄の48%はプラスのリターンだった。いい会社にお金を入れるのがアクティブマネージャーの仕事ではないか?
  • いい会社とは何か?10年単位で見ると、株価は企業業績に連動する。将来の企業業績を予想するだけで良い。
  • 1年単位で見ると業績の他に他人がどう評価するか?という分析が必要になり、当てるのは難しくなる。そのため、一般的なアクティブファンドは良い成績を残せていない。
  • 絶対リターンを目指すにはインデックスファンドではなく、ベンチマークと関係ない値動きをする長期集中投資したアクティブファンドが良いのではないか。
  • 長期集中投資にはいくつかパターンがある。バフェットのようにいい会社に長期投資するか?フォーカスファンドのように問題を抱えているが潜在力のある会社の株を持ち、株主提案を行うことで企業価値を高めるパターン。
  • アメリカでのバフェット型集中投資ファンドの手法を見るとリターンを上げるために高い収益性を求めるが、持続性という観点から環境・社会・ガバナンスの要素も評価している。
  • 集中投資は日本国内だと20〜40銘柄くらいだと尖った成績が出るのでは?
尖った運用をするアクティブファンドに登場して欲しいというのは自分の願いでもあり、話されている内容は自分の考えと一致しているし、それをしっかり理論的に話されていて勉強になりました。 この日にお話された事に近い内容がこちらのレポートに書かれていますので、参加されなかった方は是非読んでみて欲しいです。  →日本株運用における 長期集中投資の必要性(堀江貞之) 日本株に限定して考えると結構TOPIXを超過しているアクティブファンドが多くて、なぜなんだろう?と疑問に思っていたのですが堀江さんのお話を聞いて納得しました。10年で見たら半分は値上がりしているのに、TOPIXは-30%というのはまともな運用をしていればいくらコスト差があったとしてもインデックスファンドには勝てそうです。 100銘柄持ってしまうと計数的にはベンチマークから2〜3%程度しか離れないようになってしまうという事で、尖った運用を求めるなら集中投資です。日本でも5,000億円規模くらいまでは集中投資で十分いけると話されました。 問題は投資というリスクを取る行動に対してまず心理的ハードルがあるのに、さらに尖った運用を普通の人が求めるか?という点です。 堀江さんも年金運用で長期集中投資が採用されないのは、年金基金の担当者が自分のキャリアを傷つけないように目立った行動をしたがらないためと話されていました。他の年金基金もマイナスになっているのであれば、自分たちもマイナスでも責任は問われない。ましてインデックス運用をしてさえいれば相場のせいにできます。 本来、年金基金って将来に向けてお金を増やさないといけないのに、インデックスが下がっているなら同じように下がってもOKというのはおかしな考え方です。 実際問題、あまり欲をかくとろくでも無い商品に手を出して余計にパフォーマンスが悪化する例もありますが、長期的目線で企業分析を行って集中投資を実践しているファンドに投資することで単年度で見たらインデックスに劣後することもあるかもしれませんが、結果としていいパフォーマンスを上げることができると思います。 そして、そういうお金が増えるといい会社にはお金が集まって、ゾンビ企業には市場から退場してもらえるようになるのです。 長期では利益成長に応じた株価上昇が期待できるとわかっても、目先の値動きがランダムウォークするとどうしてもその流れに乗ろうとしてしまいがちです。そこをぐっと堪えて長期投資しようとすると、同じ目線で資金を入れてくれる投資家の存在が必須条件になります。 ファンドだけが長期投資を目指していても、投資している人が短期目線ではランダムウォークする株価の動きによりリターンが悪化した時期に解約が入って、ファンドの運用の質が落ちてしまいます。 それを避けるにはしっかりと運用哲学を全面に打ち出して同じ価値観を共有した投資家が資金を入れるという仕組みが必要です。 途中までは順調に資金流入して成績も良かったファンドがある日を堺に解約が多くなって運用の質が落ちるのをこれまで何度も見てきました。直販系ファンドはその点、価値観の共有に力を入れて、積立で毎月資金を入れてもらうことで質の高い運用を続けようとしています。 一般の公募投信の場合、そういったメッセージをなかなか発信できないのですが、目論見書の簡素化などで投資家にどんな運用を目指しているのかをよりわかりやすく伝えやすくなったと思います。他にも決算ごとの運用報告書を工夫するなど投資家に対してメッセージを発信する場はあるはずです。 直販も一般の公募投信も投資家と投資する目的を共有できるような情報共有ができるようになると、長期集中投資のような尖った運用もしやすくなるのではないかと思います。 また、事前にインデックスに勝てるアクティブファンドを選ぶことは難しいというのがインデックス投資派の言い分ですが、長期的に見たら株価は企業業績に連動するという理屈に則ると、運用哲学と過去実績を分析することで良いファンドを選び出すことは可能だと自分は考えています。(あまり無いのが悩みですが) 日本の公募投信ではスパークスやコモンズ投信くらいかと堀江さんは仰られていましたが、アンチベンチマークを打ち出している 結い2101 (これは100社程度に分散を目指していますが、業種や市場などを徹底的に分散してTOPIXとは異なる動きを目指してます)や、 ひふみ投信 (相場の過熱感に応じてキャシュポジションを変動させることで絶対収益を目指す)なんかも長期集中投資とは違いますが、TOPIX並の成績ではない結果を出すと考えています。 外国株なら 朝日Nvestグローバルバリュー株オープン でしょうか?これは長期投資だけでなくバリュー投資の要素も強いですが。 参考)  コモンズ30ファンド(コモンズ投信)  スパークス新・国際優良日本株ファンド(スパークスアセットマネジメント)    結い2101(鎌倉投信)  ひふみ投信(レオス・キャピタルワークス)  朝日Nvestグローバルバリュー株オープン(朝日ライフアセットマネジメント)   もちろん、全部を長期集中投資された尖ったファンドにしてしまうと選択を誤ったときのダメージが大きいので、インデックスファンドを中心に投資して、超過リターンを目指す一部資金をそちらに回すという事でもいいと思います。 最後に、セミナーの様子をTwitter中継しましたので、そのまとめをどうぞ。