鎌倉投信の鎌田恭幸社長が書かれた鎌倉投信の本です。
セミナーで語られる鎌倉投信の心の部分が丁寧に書かれていて、セミナーに参加できない遠方の方でも鎌倉投信が何を目指している会社なのか?そして「結い2101」とはどういった投資信託なのかがわかるようになっています。
第1章 儲けようとしない”自利利他”のこころが投資に利益をもたらす
第2章 高いリターンを求めない年輪運用
第3章 日本でいちばん投資したい「いい会社」
第4章 目に見えない価値が目に見える価値を生む時代
第5章 「場」としての鎌倉投信
終章 投資の果実とは
第一章では鎌倉投信が目指す投資の姿について語られています。
・投資とはお金を価値あるものに変えること
・資産を増やしたいという健全な欲求を会社の活動を通じてうまく社会の発展成長にのせる
・経済を犠牲にして社会的問題を解決しようとしても、その逆でも持続性のある社会への扉は開かない
この価値観に共感できるかどうかで、鎌倉投信に投資するかどうかは分かれるところだと思います。
投資はまごころであり、金融はまごころの循環である
これが鎌倉投信の投資哲学です。
「綺麗事を言っていて儲かりそうにない」というのが鎌倉投信に対するよくあるイメージだったりしますが、鎌倉投信の考える”いい会社”とはしっかりと利益を上げて持続性のある会社です。
鎌田さんは二宮尊徳の以下の言葉を引用しています。
『道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳はたわごとである』
社会にとって良いことをしていても、NPOのように寄付金が入り続けないと持続できない仕組みはまだ不完全で、経済的な利益をしっかりと出した上で社会にとって必要とされる活動を行うのが理想です。
この両立はとても大変なことではありますが、鎌倉投信ではしっかり利益を出している”いい会社”に投資をしています。
ものすごく儲かる投資手法ではなく、徐々に徐々に育っていく年輪運用ではありますが、信託報酬を1.05%とした上で年間4%の利回りを目指しています。
実際、2011年4月末現在で日本株投信の1年リターンランキングで2位にランクインされるだけのパフォーマンスも残しています。
ではどんな会社が”いい会社”なのか?
それは第三章で運用責任者の新井さんがいくつかの組入れ先の会社を熱く説明しています。
いずれもニッチで本当に社会から必要とされている会社ばかりです。
また、本書の第五章では「場」としての鎌倉投信ということで古民家の本社屋で行われるイベントや受益者総会、エコ名刺など鎌倉投信を取り巻くコミュニティについて書かれています。
自分も鎌倉投信のコミュニティの魅力にとりつかれた一人で、自分用のエコ名刺を作ったり、受益者総会で取り上げられた会社の取り組みをマイクロファンドを通じて応援したり、自分の活動の輪が広がりました。
また、そこに集まる人達もいい人が揃っていて、とても居心地がいいものです。
投資の果実=資産形成×社会形成×こころの形成
これは鎌倉投信が考える投資の果実で、決して資産形成という金銭的リターンだけではないという所が自分が気に入っている点です。
寄付でもなく、投機でもない投資を通じて社会形成やそれに伴う心の満足が得られれば、通常の投資信託を保有しているよりも高い満足が得られるのではないでしょうか?
この本を読めば鎌倉投信の考える新しい金融のあり方が理解できると思います。
例えば、インデックス運用の無機質さにつまらなさを感じている人にとっても、血の通った、共感から始まる新しい金融の姿は目からウロコになるのではないでしょうか?
鎌倉投信の運用する投資信託「結い2101」を自分も買ってますし、世界観を広げてくれたという意味でもとても感謝しています。