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"いい投資"探検日誌 from 新所沢の過去ログ#1(2003年7月〜2012年3月までの記事)

マイクロファイナンスフォーラム2011に参加しました

12月11日(日)に虎ノ門の日本財団ビルで開催されたマイクロファイナンスフォーラム2011に行って来ました。

NPO法人Living in Peaceが主催しているフォーラムで今年で4回目になります。 これまで都合がつかず、参加できなかったのですが今年はようやく参加できました。

今年のテーマは「マイクロファイナンスの新地平? 〜マイクロファイナンス機関×企業×BOPビジネス〜」という事で、マイクロファイナンスに留まらずBOPビジネスにまで範囲を広げて貧困問題への対策について考える場となりました。

*BOPビジネス  途上国の低所得階層(Base of the Pyramid)を対象(消費者、生産者、販売者のいずれか、またはその組み合わせ)とした持続可能な、現地における様々な社会的課題の解決に資することが期待される新たなビジネスモデル。
特に、BOPビジネスを実際にやっている方からの話は単純な社会貢献活動ではなく、企業活動の一環として社会問題の解決にあたっているという事で力強いメッセージを聞く事ができました。

第一部 ≪BOPビジネス×マイクロファイナンス機関≫
Video streaming by Ustream 最初にLiving in Peaceの森田さんからマイクロファイナンスとBOPの現状についてのプレゼンがありました。

世界の中でマイクロファイナンス機関が一番多いのがラテンアメリカ、借り手数だと南アジア、延滞率だとアフリカが一番というのは初めて知りました。ラテンアメリカで多いってのは聞いていましたが、世界で一番多かったんだ!

そして、森田さんが実際にナイジェリアの奥地でスムージー屋さんを開業したときの楽しい話を織り交ぜつつ、プレゼンは続きました。 現地の人にとってオリーブオイルが万能薬(スピリチュアルな意味も込めて?)というのは面白いエピソードでした。 具合が悪い時やエンジンの調子が悪いときもオリーブオイルで解決。

マイクロファイナンスで貧困層の人がビジネスを始める手助けは出来ても、識字や公衆衛生、健康面や市場へのアクセスが悪い地域では貧困から抜け出せない事もある、そうした場合は寄付などの支援が必要という事をしっかり話しているのも好感を持ちました。

続いてBOPビジネスを行っている方のお話という事でmPowerのMr.Mridul 氏が登場。 モバイルの技術を使って農村部の医療支援を行っている会社です。

これまで、農村部ではコミュニティヘルスワーカーが行っても紙に記録して、それをデータベース化することがなかったためにデータの蓄積も行われておらず、街の薬屋は特に資格を持っているわけでもなく過去の自分の経験から薬を処方する!というような事が行われていたそうです。 それが、携帯電話を使って問診のデータを収集し、分析することで地域毎の病気が把握できたり、農村部の医師に対して都市部から治療に関するアドバイスを送ったりすることができるようになったという事です。

続いてグラミン雪国まいたけの佐竹氏が登場。 雪国まいたけはグラミンと提携してもやしの種子の栽培をバングラデシュで栽培する取り組みを始めています。 日本でもやしは栄養価が高く、安価な野菜なので多く消費されているが種子の95%は中国産。残りの5%がミャンマー産。

このため、レアメタルのように中国が輸出を制限するようになると日本でもやしが食べられなくなるリスクがある。 また、もやしの種子(緑豆)の価格がここ3年で3倍にまで高騰している事も要因。 バングラデシュの農村部で緑豆を栽培、選別してもらう事で5,000〜6,000人の雇用が生まれる。 収穫されたものの70%は日本へ向けて輸出(雪国まいたけ向け)、残りの30%は現地で食用として原価で販売される。

第二部 ≪マイクロファイナンス〜体験と学び≫

第二部の最初はマイクロファイナンスゲーム。 ベトナムにいる架空の4名の女性のビジネスのうち、誰が最も成功するか?というのをあてるゲームでした。

今回は人数が多かったので簡易版だそうです。 結局一番リスクをとってお金を借りて牛をたくさん買った女性が1位になりました。 そこで講評。

お金を借りずにビジネスを行っても生活費でほとんど使い切って貧困の罠から抜け出せない。 お金を借りてビジネスの規模を大きくすることで徐々に成功することができる。 天候などによっては失敗するリスクも抱えているが。 ゲームを通じて自分がその立場になることで見えてくる事がある。

続いてベトナム唯一のマイクロファイナンス機関TYMのMrs.NguyenよりTYMの紹介がありました。 TYMはベトナムの貧困層の女性を支援することを使命としており、貸し付ける先は全て貧困層の女性。 小額から借りられて分割して返済できるので貧困層の女性でもお金が借りられる。更には預金もできる。 他にはトレーニングなどを通じて貧困脱出の手助けもしています。

第三部 ≪パネルディスカッション≫
Video streaming by Ustream 最後のパネルディスカッションではソーシャルビジネスについて熱い意見が飛び交いました。 グラミン雪国まいたけの佐竹さんからはユヌス氏の定義としてソーシャルビジネスとは利益を生んだものを配当として株主に還元するのではなく、社会問題の解決に向けるもの。それは全体の数%で良いという意見を紹介。

それに対してmPowerのMr.Mridulは一般の企業であっても社会に対して良いインパクトは与えている。ソーシャルビジネスかそうでないかの違いは取締役会や株主総会が社会的なインパクトの大きさを意識して議題にのっているか?という意見でした。 通常の企業がROI(投資収益率)を意識するのに対してソーシャルビジネスではソーシャルROI、ソーシャルインパクトをいかに効率的に起こしているか?という指標を見るとも話していて、ビジネスよりの人の考えは自分に近いなと感じていました。

会場からの質問で雪国まいたけのようにソーシャルビジネスに会社を巻き込むにはどうしたらよいか?どういう会社を選べばよいか?というのがありましたが、佐竹さんの回答が素晴らしかったです。

とにかく、一人前のビジネスマンになること。社内調整と社外調整が必要になるのでそういったスキルを身につける必要がある。 大きな会社だと同じようなことを他にもしたいと考えている人がいるかもしれないし、小さな会社だと自分が担当できるかもしれないメリットがある。 大学生はとにかく知名度のある大きな会社に惹かれがちですが、大きな会社ほど内部は淀んでいる場合もあるし、大きいから将来安泰というような世の中ではないので、その辺の意識も今後は変わっていくといいなと思ってます。

マイクロファイナンスフォーラムに参加しての印象ですが、とにかく参加者が若い! 若い人がこういった事に興味を持つというのは素晴らしいですね。自分たちの世代では考えられなかったことです。 今回はBOPビジネスを実際にやっている人の話が聞けたのはビジネスマンとしての自分にとって刺激的だったし、勉強になりました。

まだまだ自分が向かう先がぼんやりしているけれども、少しずつ考えていきたいです。 他には雪国まいたけの活動が佐竹さんの話を聞いてみて素晴らしいと感じました。 食用には小さな豆がよくて、もやしの種子には大きな豆が良いとか、とにかくバングラデシュでも貧しい地域でたくさん雇用を生み出す形で栽培を行うなど、色んな意味で現地にとってメリットが生まれるように考えられています。

もちろん雪国まいたけにとっても中国よりも安価に自社農園から安定的に緑豆の供給が受けられるというメリットがあるのですが。 鎌倉投信の結い2101はこのグラミンとの提携を評価して組み入れていますし、ひふみ投信も雪国まいたけを組み入れています。

ファンドを通じてこういう「いい会社」に投資できているというのも嬉しい事です。 フォーラムの様子はUst中継もありましたが、Twitterでも中継しましたので、その様子をまとめてみました。

【関連URL】  Living in Peace