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"いい投資"探検日誌 from 新所沢の過去ログ#1(2003年7月〜2012年3月までの記事)

ソーシャルビジネスカレッジ第七回 池内計司(池内タオル)

12月15日(木)に大和スカイホールで開催されたソーシャルビジネスカレッジの第七回に参加しました。

講師は池内タオル株式会社の池内 計司社長。

「愛媛県から世界へ−今治とタンザニアをビジネスで結ぶ『風で織るタオル』」というテーマでお話をされました。

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風で織るタオル誕生

IKTというファクトリーブランドを1999年に始めたが、しまなみ海道が開通するため、観光客を見込んで物産館などで販売するためのものとしての位置づけだった。

その頃の池内タオルはデザイナーズブランドのタオルハンカチのOEM生産が中心で、デパートで販売されているデザイナーズブランドのタオルハンカチの2/3は実は池内タオルが製造しているような状況だった。

そこで、デザイナーズブランドのハンカチを買い取って物産館で販売しようとしたらデザイナーズブランドの会社からとんでもないと断られた。

そのため自社ブランドのタオルを作る事にしたが、オーガニックコットンは今治では既に終わっていたもので10年ぶりくらいの生産だった。以前やっていたオーガニックコットンタオルはミシン糸などはオーガニックコットンではないコットンが使われていたので、再度オーガニックコットンを使うにあたって「嘘をつかないオーガニックコットン」というコピーで販売した。

オーガニックで環境に優しいのはアグリカルチャーと高いのに買ってくれるお客様。自分たちは商売にしているだけで環境に優しいわけではないので、自分たちも環境に優しくなろうという事にした。東京でエコプロダクトショーに出展したりしたが、当時のエコプロはエコマニア達がメーカーをぎゃふんと言わせようとやってくるような展示会で池内タオルもそこで相当鍛えられた。

テレビで大阪のとある施設がグリーンパワーを利用したというのを見て、自分たちの会社も導入したいと思って連絡をしたらすぐに今治に来てくれる事に。先方もどうやったら中小企業に売れるのか検討しているところにちょうど声をかけてくる会社があったので、条件なども話し合って導入が決まった。

小泉首相の所信表明演説で頑張る企業という事で名前は出なかったが取り上げられた事でニュースステーションでも紹介された。

 

オーガニックコットンについて

池内タオルでは他メーカーのようにオーガニックコットンの産地を前面に出していない。綿花がどこで生産されたかというのが製品に与える影響は10%程度。

池内タオルではEU基準に準拠した綿糸しか利用していない。例えば日本オーガニック協会の基準だと紡績工場の環境などは含まれず綿花の生産環境だけを見ている。紡績工場でもラインを別にして混ざる事がないところまで求めているのがEU規格。

アメリカで売ろうとしたらEU規格の綿糸を使っていないと相手にされないのでそうしている。どうせそんなに売れないと当初は思っていたので徹底的にこだわりぬいて生産していた。

綿花の生産には広大な土地が必要。バスタオル1枚作るのに20坪の土地が必要になる。有機農法では手摘みだが、そうでない場合は機械で刈り取る為に枯れ葉剤を散布して緑の葉っぱを枯らしてから機械による刈り取りを行う。また、食用でない野菜なので野菜ではやらない遺伝子操作された種子とたっぷりの農薬が使われている。

そんなことをしていると土地も痩せるし文字を読めない農民が農薬をマスクなどせずに散布するため健康を害している。オーガニックコットンが生まれたのはこれ以上農夫が死亡するような事になると困るというところから。

オーガニックコットンの糸の値段は通常の約4倍するが、綿花は有機農法では輪作ができないので農地の半分しか生産できない。タンザニアの有機農法ではない農地では二期作で全ての農地で収穫ができるので生産量に4倍の差がある。

昨年ようやく世界の綿花生産量のうちオーガニックコットンが1%を超えた。これからも増えていって欲しいが、全てがそうなるには地球上に土地が足りるのか?という問題も。

 

リーメイ社の取り組み

今年の夏にコットンヌーボーで使っている綿花を生産しているタンザニアに行って来た。目的はきちんとフェアトレードになっているのか確認するため。

リーメイ社は有機農法の指導や女性が自立するための指導なども行っている他、井戸を掘ったり学校を作ったり、僻地で教師が来てくれないところには教師用の住宅を作ったりしている。

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年間売上が20億円程度の企業なのにもの凄く生産者のために尽くしている。生産量の80%を通常より10%高く買い取っている。実際、有機農法をしている農家に行ったが年収が30万円程とタンザニアの平均年収が2万円なのと比較するとずいぶん収入が高いようだった。何をして欲しいか聞いてみたら、継続して買い続けて欲しいと言われた。昨年は綿花が不作で日本の商社が札束攻勢で買いあさったりしていたらしい。

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リーメイ社の糸はとてもピュアでいいもの。タオルはたくさん糸を使うため、たぶん池内タオルが最大の取引先。他のヨーロッパのメーカーもリーメイの糸を使っているが、糸はいいのに製品にこだわりを感じないのがもったいない。

リーメイ社の社長には来年日本に来てもらってコットンヌーボーの発表会では話を聞ける様にしたい。

 

カンブリア宮殿

村上龍さんとは事前打ち合わせなどない生収録。テレビで放送していない部分もネットでは公開されているし、村上さんが業界的に言っていいの?というような事を発言してもそのまま放送していたので日本のマスコミにも良心があったんだと驚いた。(カンブリア宮殿動画はこちら

愛媛では放送日が異なっているのでTwitterで様子を見ていたらあっという間に池内タオルのサイトが落ちた。すぐ再起動したが、その間に楽天のショップは開いているという情報をTwitterに流してくれる人が現れたり・・・。

村上龍さんがすごく柔らかいと言ってくれたので、とにかく触りたいという人で東京事務所は大変なことに。東京事務所に行っても自分の居場所がない状況。明日予定していた取締役会も延期に。新宿伊勢丹では放送の翌日開店前から行列ができたらしい。

 

民事再生からの復活

最大の取引先だった問屋が倒産したため、売掛金が回収できなくなり池内タオルも連鎖倒産することに。NYのテキスタイルショーで賞をとったりして秋からは取引先も増える矢先の出来事だった。

民事再生をすることにしたが、民事再生をするにも現金が必要。そんなお金はないので裁判所に1,500万円かかるところをなんとか900万円にならないか相談にいったら半年で債権者をまとめたらできるという事だった。それまで愛媛県の最速で18ヶ月。

たまたまテレビ局の取材が入っている最中に民事再生をすることになり、途中で取材拒否するのもなんなので裁判所に行くときや債権者集会の様子も撮影された。マスコミが入った事で日経新聞にも民事再生は記事が掲載され、熱心なファンから「何枚タオルを買えば助かりますか?」というメールが来て励まされた。メインバンクの頭取のところにも相当のメールなどが届いたらしい。

債権者集会の日はちょうど東京での販売の日でいいから東京に行けと言ってくれた。東京ではカタログを倍にしたやるなどと温かい声もあった。再生に成功はしたが、民事再生というのは経済犯罪人。愛媛では間接金融から融資を受ける事はできないし、ミュージックセキュリティーズのファンドはありがたい。ファンがお金を出してくれるし、売れなければタオルでお返しするという自分たちにとって虫の良い話。

今治工場の見学会にもファンドの投資家が来てくれたが、松山=東京間の通常航空運賃は自分が松山からニューヨークに行くのと5,000円しか違わない。ファンドよりも飛行機代の方が高いのに足を運んでくれてありがたい。

少し商品を変えたら熱烈なファンから池内タオルもそういう会社になってしまったのかとお叱りのメールが嵐のように来た事も過去にはある。顔が見える関係だとブレずに続ける事ができるし、投資家側もぶれないでいて欲しいと思っている。

 

今後の展開

海外からはいつシーツを作るんだ?と言われている。ヨーロッパではシーツは毎日替えるのでお金持ちはベットが10個あるような家に住んでいてまとめて70枚買ってくれたりする。タオルが安全と言われるとシーツが心配になるようだ。日本の場合はベビー服。

オーガニックのテキスタイルはなんでもできるようになりたい。

IKTというブランドは生き物で自分は今の時代を担当している社長というだけのように感じている。IKTというブランドが進みたい方向に勝手に進んで行くような感覚。

 

Twitter中継

セミナーの内容をTwitter中継したのでTogetterでまとめました。


ソーシャルビジネスカレッジ第7回 池内タオル株式会社 池内 計司氏 - Togetterまとめ