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"いい投資"探検日誌 from 新所沢の過去ログ#1(2003年7月〜2012年3月までの記事)

マイクロファイナンスファンド「カンボジア3」説明会(1)

10月19日にミュージックセキュリティーズが設定・募集しているマイクロファイナンスファンドカンボジア3」の説明会が開催されました。仕事の関係で参加はできなかったのですがUstream中継のアーカイブを後から見ましたので、それを元にまとめてみたいと思います。

日時

 10月19日(火)19時〜21時

場所

 新丸の内ビルディング10階・21cクラブ

講演者

 NPO Living in Peace(LIP)の代表 愼 泰俊さん

 LIPメンバー 長島 毅さん

 ミュージックセキュリティーズ 杉山 章子さん

Ustアーカイブ

 前半 http://www.ustream.tv/recorded/10294775

 後半 http://www.ustream.tv/recorded/10295283

参考リンク

 マイクロファイナンスファンド カンボジア3

 Living in Peace

 セキュリテ

LIPとマイクロファイナンス貧困削減投資ファンドのコンセプト

 LIP代表 愼 泰俊さん

何故マイクロファイナンスか?

Living in Peaceの合言葉(マントラ)は『すべての人に、チャンスを。』

貧困から抜け出すために何が大切なのか?という考え方。

援助ももちろん必要だけれども、究極的には個人の意思があってこそ貧困から抜け出せると考えている。

貧困から抜け出したいという本人の強い意思が持続的な意味で貧困から抜け出すためには必要。

マイクロファイナンスとは主に開発途上国のこれまで金融サービスを受けることができなかった人、お金を借りたり預金することができなかった人向けの金融サービス。単純な援助ではなく、人々に自分の事業を始めてもらう機会を提供するという違いがある。

開発援助の世界では革新的な仕組みだが、その背景にはこの仕組みだと誰もが自分の運命の主人になることができるという考え方がある。

きっかけがなければ人々は貧しいまま生活を続けなければいけない場合もあるが、今はお金がないけれども、お金を借りることで自分で事業を始めて新しい生活を勝ちとることができる事もある。

元々人はある程度の条件さえ揃えば自分の力で自分の運命を勝ち取ることができるはず。

それが、マイクロファイナンスに特化している理由。

開発途上国でお金を貸すと返さないのでは?という心配があるが、ほぼ100%の返済率

コミュニティの力が働いている村では情報が早い。

そんな中では借りたお金は返さなければ村にいづらいという力が働く。

コミュニティの力が信用力へというのは経済学的にも革命的なもの。

仲間を裏切る事ができない。

マイクロファイナンスで貸し出している例

都市部シェムリアップの人の場合、建設関係の材料を売っている。

この人は$3,000を満期18ヶ月、金利は月3%。

農村部でグループで借りている場合。

$100を借りて一人は野菜を仕入れて売る、もう一人は魚を仕入れて売るという事をしている。

次の人は車の修理をしている。

カンボジアは交通事故が多いので、修理の仕事は多い。

次の人は最近のカンボジアは天気がいいので、ここで一気に生産量を増やすべく有機肥料を買うためにお金を借りた。

このように、経済の至る所に使われるのがマイクロファイナンスの特徴。

生活に根ざした金融と言える。

なぜマイクロファイナンス機関(MFI)に投資するのか?

マイクロファイナンス投資のリスクは意外に低い

主要金融資産との相関度が低く、株式市場が低迷した2008年、2009年でも0%を下回っていない。0%、2-3%。

金融アクセスがないところに金融アクセスを提供するのは意外に堅調な事業。

むちゃくちゃいいとも言えないが、悪いものでもない。

マイクロファイナンス(MFI)投資ファンドの資産残高は堅調に成長しているが、問題も抱えている。

問題点1:大手MFIにお金が集中してしまっている

 大手がやっているMFIファンドの規模は150万ドル。しかも最低投資金額50万ドル。

 小さい規模のMFIとしては小さい金額でお金が欲しいが、MFIファンドが提供しようとする金額が大きいために結果的に大手マイクロファイナンス機関に資金が集中してしまっている。

問題点2 地域も偏っている

 MFIファンドでは安定性を求めて既に金融サービスがある国に投資されている。

 本来金融サービスが提供されていなかった人たちへのマイクロファイナンスだったのが、必要なところへお金が届かないことに。

なぜこういう事が起きるかというと、初期分析にかかる費用はファンドサイズの大小関わらず変わらない。

例えば、11月にカンボジアに行ってくるが、1週間でその費用は渡航費、日当込みで一人約20万円。二人だと40万円必要。

これは1,000万円のファンドサイズだと4%に相当する。

仮に10%のリターンがあっても固定費を引くと6%のリターンになってしまう。

その為、ファンドサイズを大きくするのが(投資家側の)経済的には適っている。

これは課題。

なぜ中小規模のマイクロファイナンス機関に投資するのか?

中小規模のMFIへの投資は以下の理由で重要

 マイクロファイナンス機関の人が生まれ育った土地勘のある場所で、貸し出す人の事も知っている。

 地域に特化したサービスができる場合がある。

 大手だけが伸びていくのではなく中小規模も伸びることは経済的にも大事な事。(日本でもベンチャーが伸びないと産業は冷え込んでしまう)

 そうしないと、いつかまずいことが起きてしまう。例えば、お金を返せないときに高圧的に返済を迫ったり、不利な条件で貸し出すなど。

その為に中小規模のマイクロファイナンスへ投資するファンドを作った

ただ、投資先はしっかりモニタリングするため、地域で一番大きなマイクロファイナンスと業務提携している。

具体的にはフィリピンの大手マイクロファイナンス機関CARD MRIが出資した先へデューデリジェンス、モニタリングを行っている。

よくわからない機関へ投資してダマされない様に、実績のあるMFIが協力しているMFIを選んでいる。

今後の課題

直接投資するマイクロファイナンスファンドは現在のところ日本では他に誰もやっていない。

そこで、日本でのマイクロファイナンスファンド案件の経験を積み上げ、日本での地位を確立していきたい。(専門スキル、世界でのプレゼンス、コスト効率化、案件経験の積み上げ)

将来的には規模の拡大も目指す。(法人投資家からの資金調達、広く世界展開、株式投資も行う)

LIPでは本業で培ったプロフェッショナリズムを世の中を良くする方向に活かす活動を行っている。

日々の活動はMLやSkype,GoogleDocなど技術進歩に支えられていて、それぞれの空き時間を使って事業を行っている。

50人くらいに人が平日夜と休日に例えば 10時間/週だとすると、それは5人フルタイムに携わる事と同様。

こういった新しいライフスタイルの在り方も提唱しつつ、元々のミッションである貧困の削減と機会の平等の実現を少しだけでも推し進められるように今後も頑張っていく。

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