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"いい投資"探検日誌 from 新所沢の過去ログ#1(2003年7月〜2012年3月までの記事)

【目論見書・運用報告書を読む】Avest-E

目論見書・運用報告書を読むシリーズ第四回目は朝日ライフアセットマネジメントの朝日Nvestグローバルバリュー株オープン(愛称:Avest-E)です。2000年3月に設定されて以来MSCIコクサイインデックスを長期的に超過するリターンを叩き出している外国株ファンドです。運用自体はハリス・アソシエイツが行っています。 参考資料はこちらです。  交付目論見書  第11期運用報告書  月次運用レポート  朝日Nvest グローバル バリュー株オープン全組入銘柄一覧  [ハリス・アソシエイツ社 ロバート・テイラー氏を招いて]  3/7セミナーのご報告 目論見書、運用報告書を読むにあたり、竹川美奈子さんが提唱するP-CCAP(ピーキャップ)の法則を利用します。  ・Policy(運用ポリシー)  ・Cost(手数料)  ・going-Concern(継続性)  ・Asset(純資産総額)  ・Performance(運用実績) 1.運用ポリシー(Policy) このファンドの外国株部分の運用はアメリカのハリス・アソシエイツに委託されています。 ハリス・アソシエイツでは運用するすべての株式ファンドを一貫した「バリューの哲学」に基づいて運用しています。 バリューの哲学
  • 調査によって本来の価値を見極め、バリュー株を発掘する
  • 情報を足で稼ぎ、自らの頭で考える
  • 株主を重視しない経営者には投資しない
  • 過度の分散投資により収益チャンスを薄めない
  • 良い銘柄を仕込み、熟成を待つ
運用の特色
  • 日本を除く世界中の株式を対象として、企業訪問を含め企業調査を基本としたボトムアップ・アプローチを重視した銘柄選択を行います。
  • エマージング諸国も投資対象としますが、ポートフォリオの30%以内の投資制限を設けます。
  • 徹底した企業調査により、投資銘柄数は30〜50銘柄程度に絞り込みます。
  • 国や業種などにはこだわらず、個別の銘柄選択の積み上げにより銘柄本位でポートフォリオを構築します。
日本を除く世界中の国から30〜50銘柄という徹底した厳選投資を行います。 また、組み入れる銘柄は国や業種などをインデックスと比較して配分するのではなく、あくまでも厳選した銘柄の集合から構成されるポートフォリオであり、ベンチマークは設定されていません。 企業調査の結果、企業の本来価値から相当割安と考えられる銘柄を平均3年程度保有する前提で投資します。 3月の来日セミナーではマーケット全体のマクロ環境についてエマージングと天然資源株に割高感があるものの、他については割安な銘柄を見つけることができる状況との事でした。 また、ハリス社が投資する企業のクオリティについて1.新規の参入障壁の高いビジネスか? 2.フリーキャッシュフローを生み出す力があるか 3.経営者の質が高いか という点についても割安さだけでなく注目しているそうです。 投資対象:  アメリカ、カナダ    25〜75%  上記以外の先進諸国   0〜30%  エマージング諸国    0〜10% *信託財産全体の30%以下 同一銘柄への投資制限:  5%を上限とする 回転率:  第10期(2009/3/16〜2010/3/16) 0.42  第11期(2010/3/16〜2011/3/16) 0.43   アクティブファンドとしては回転率は低めです。 2.Cost(手数料) 購入時手数料:  最大3.15%(税込)とし、販売会社が決めることができます。  ネット証券などを中心にノーロードで買い付けできる販売会社もあります 信託報酬:  年率1.89%(税込)[税抜1.80%]    現在、純資産総額が約250億円という事で一番右端の信託報酬体系となっています。  信託報酬はファンドの純資産総額が増えるほど販売会社の取り分が増え、委託会社(運用会社)の取り分が減る仕組みを取っています。  この手法は受益者(投資家)の負担をかけずに販売会社に販売に対するインセンティブが生まれる仕組みではありますが、そこまでして売ってもらわないといけないという運用会社の立場の弱さが出た仕組みでもあります。  そして、受益者には何の還元もないというのが一番のデメリットです。  受益者にとってもメリットのある信託報酬体制になるといいなと思います。  実際に外国株の売買の指示をしているハリス・アソシエイツ社の取り分は0.63%のまま変わらず、朝日ライフアセットマネジメントの取り分が減り、その分が販売会社にスライドしていますので、結果として販売会社の方が運用を担っているハリス社よりも信託報酬取り分が多い事になっています。  これは受益者にとって納得感がありません。そもそも販売会社は売った後のケアにそんなにコストかかってないと思うのですが。  多くの投資信託でこのような仕組みが採用されていますが、運用会社にとってのお客様は受益者(投資家)ではなく販売会社というのが露骨に見える仕組みは止めて、投資家にとってもメリットのある信託報酬体系への転換を望みます。  実際のところ資産規模の小さな独立系直販投信ですら信託銀行の報酬分を含めて資産規模の成長に応じた信託報酬の低減を導入しているところがあります。ちっぽけな運用会社でできることが、大手や中規模の運用会社にそのような事ができないはずはありません。 監査費用:  年42万円(税込)を上限に年0.00525%(税込)が監査費用としてかかります。 信託財産留保額:  ファンドの売却時に0.3%の信託財産留保額がかかります。  この費用はファンドに残り、残りの受益者で按分されますので費用というよりは迷惑料のようなものです。  賛否両論ある費用ではありますが、気軽に売却ができなくなりますので長期投資が根付くいい仕組みだと思います。  このコストを負担したくない場合、分配金を受け取るという事でも、ある程度は解約する代わりとする事ができます。 ※実質コスト    Avest-Eの11期の実質コストを求めます  平均基準価額(前期末基準価額+今期末基準価額)÷2=8795.5  実質コスト=11期実質コスト 177円÷平均基準価額 8795.5円2.01% 3.going-Concern(継続性) このファンドは当初設定受益権口数の10分の1もしくは10億口を下回った場合に繰上償還の可能性があります。 現在の受益権口数は35億口ありますので、繰上償還に関しては心配しなくてもいいレベルでがありますが減少傾向が続いている事は注意が必要です。 4.Asset(純資産総額) 2011年3月16日現在で約250億円の純資産があります。 ピークから比較すると大分減ってしまいました。 5.Performance(運用実績) 11期も参考指標としているMSCIコクサイインデックスを上回る成績を残しました。 設定以来多くのケースで参考指標を上回る成績を残しており、長期にわたる運用実績も残しています。 コストが高いのは否めませんが、それでもしっかりMSCIコクサイインデックス以上の成績を残していますので個人投資家にとっていいファンドだと言えると思います。 投資信託を説明する本でよく書かれている「よく分散されていて低コストなファンド」とは全く逆を行くファンドですが、インデックスを超過するためには、そのくらい尖ったファンドである必要があると考えています。 低コストのインデックスファンドを否定するつもりはありませんが、長期的に素晴らしい成績を残すファンドも一部には存在するという点を受け入れられる投資家さんにはオススメのファンドです。