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"いい投資"探検日誌 from 新所沢の過去ログ#1(2003年7月〜2012年3月までの記事)

バフェット流投資に学ぶこと、学んではいけないこと

『バフェット流投資に学ぶこと、学んではいけないこと』 ダイヤモンド社 ヴァホン・ジョンジグヨン著 平野誠一訳 バフェット本が最近続々と登場していますが、こちらも良本です。 単にバフェットを讃える本が数多く出る中で、バフェット流投資に関する注意点をしっかりと書いています。 また、各章ごとにまとめがあるのも親切です。 実際、普通のバフェット本ではバフェットは永久保有を謳う長期投資家で株式投資で世界一の財をなしたとありますが、実際の所バフェット流投資はそう単純なものではありません。 バフェットは難しいことも簡単な言葉で表現できるという優れた資質を持っていますが、それをそのまま時系列を考えずに本にしてしまうと今はそんな事をしていないのにっていう事も含まれてしまいます。 少数銘柄への集中投資をしていた時代は既に終わり、現在バークシャーハザウェイは多数の銘柄を保有しており、また2〜3年で売却されてしまう銘柄も後を絶ちません。 また、一般的にバリュー投資家として名が売れているバフェットですが バフェットは割安株投資をしているのではなく、割安になった優良株への投資をしています。 本にある言葉では 安い銘柄を買うのが好きなのではなく、目をつけた企業の株を安く買うのが好き グロースに分類される株でも、自らが目をつけた優良企業が何らかの原因で一時的に株価が割安になった時、その時こそバフェットが買いに入る時なのです。 また、基本的にバークシャーハザウェイは株式投資よりも企業そのものの買収を好みます。 株式投資を元手に企業買収で世界一のお金持ちになった これが正しいバフェット評だと思います。 分散投資か集中投資か?という話題でバフェットは企業を評価する方法を本当に知っている人は六銘柄程度への分散で十分という事を話す一方で、99%の人には十分に分散されたインデックスファンドへの投資を薦めています。 バフェットは企業を評価する方法としてバフェットはフィリップ・フィッシャーの成長株を見分ける方法を用い、実際に株を購入する段階でバリュー投資の父であるベンジャミン・グレアムの割安株投資の手法を用いる複合型の投資家です。 また、バフェットの場合は投資に失敗しても多額のお金で大株主に名を連ねる事ができる事から、経営陣に口出しをして経営を立て直させることも可能ですが、一般の投資家はそこまでの資金量を持っていないので単純にバフェットの真似をしたところで同じようなリターンを出せる訳ではない点にも注意が必要です。 簡単にバフェット流投資ができるというような本があったりしますが、実際はそんな簡単なものではありません。 また、この本ではバフェットの企業買収や株式投資の失敗も何点か紹介されており、バフェットといえども万能ではない姿を見る事ができます。 ただ、バフェットの凄い所は失敗したように見えてもそこからリカバリーする実力を持っているところでしょうね。ゼネラル・リーの買収では相当手痛いダメージを受けたようですが。 また、『最高経営責任者バフェット』の中で出て来たネットジェットは失敗例に入ると知って驚きました。あの本の中ではリッチ・サントゥーリはバークシャーの次期CEO候補として挙げられていたくらいですので。航空業界は厳しいというのは知っていましたがバフェット配下の企業も厳しい波にのみこまれていたんですね。 別の本になりますが、『バフェットの株主総会』という本でバークシャーに買収されるという事はキャッシュフローをバークシャーにコントロールされるという事で新たな設備投資や新たな土地での展開などに制約が課せられるようだというのもバークシャーの悪い点をうまく書かれていて勉強になりました。 最近、こういったバフェットをほめ讃える本だけではない本が出て来て個人的には嬉しい限りです。 この本はバフェットに興味を持って色々勉強した後に(先に読むにはあまり面白くない本なので)是非読んで欲しい本です。 7章まではバフェット好きには文句無しにお薦めです。 8章以降は個人的にはどうでもいい内容でした。これはバフェットマニア向けの内容でしょう。 僕個人としても引き続きインデックスファンド+アンダーバリュー株への投資を行っているファンドへの投資という組み合わせで行きたいと思います。