Site.M from 新所沢

"いい投資"探検日誌 from 新所沢の過去ログ#1(2003年7月〜2012年3月までの記事)

リスク資産への長期投資は一概に有利とはいえない理由

ファンドの海の連載記事『連載:リスク資産の複利確率(23)〜複利で増える可能性は明らかに半数未満である』にて 「長期でみれば、リスクのある金融商品は複利で増えることが期待できる」という説明は誤りです。 という長期投資家にとってなかなかショッキングな事実が書かれています。 リターンが正規分布する金融商品の何年後の価格分布も対数正規分布で表現できることになり、最頻値<中央値<平均値という分布になるため、リスクのある金融商品にとって、平均値を超える確率は50%以下だ! という結論に達しています。 確かにリスクがでかいとその分結果もブレるから綺麗に複利のように殖えないんだろうなというのは感覚的に思ってましたがデータで出るとなかなかショックです。 また、ニッセイ基礎研究所の2001年12月の『背伸びしない株式投資のすすめ』というレポートに長期投資といっても一概に有利とは言えないデータが掲載されていました。 まずは、長期投資を推奨する際によく見かけるTOPIXに長期投資した際にリターンがある一定の値に収束していくグラフについて
一見して運用期間が長くなるほど最大値と最小値の格差は縮まり、あるプラスの値に平均収益率が収束していることがわかる。このため、長期投資によって株式投資の危険性が確実に減少できるような印象を受ける。 (中略) 上記の『時間分散効果』は、統計学の基本知識である「標本平均は標本の数が増えるほど、真の平均に近づく」という「大数の法則」に基づいている。このため標本数(ここでは投資年数)が増えるほど、年間平均収益率があるプラスの値に収束し、ある程度以上、下振れしてしまう確率が低くなる。
と書かれており、あくまでもあのグラフは大数の法則に従って平均値に向けて収束しているのを表すグラフであって長期投資がリスクを減らすという訳ではないとあります。 また実際に、株式(TOPIX)運用した際に国債のようなリスクフリーの資産運用した場合のリターンを下回ってしまう確率を1970〜2000年の各年12月末日のデータを用いて調べた結果も掲載されています。 株式投資した際にリスクフリーレートを下回る確率は  1年間:35%  20年間:8% これだけ見ると長期投資した方が儲ける確率が確実に増えたように思えます。 株式投資した際にリスクフリーレートを下回るリターンだった時の平均損失率  1年間:19%  20年間:38% 先ほどのデータからもわかるように損をする確率は35%から8%に減っているものの、その場合の平均損失額は19%から38%へと拡大しています。 滅多に起こらないが、起きた場合の影響はでかい事象が長期投資の場合も発生することがわかります。また、こういう時に過度にリスクをとっていた投資家は吹っ飛びます。 このレポートでは許容できる危険の量は背伸びしないで決めるというまとめ方をしていますがまさにその通りで、安易に株式比率を100−年齢というような求め方をするのではなく、しっかりと保守的に考える必要があります。 特に暴落局面を一度も経験していない投資家の場合は自分が思うよりも損失への許容度が低い場合があるのでリスクを抑えるアセットアロケーションを組む事が大事です。