火曜日に鎌倉投信に行って結い2101について伺ってきました。
何故公募投信にしたか:
私募投信であれば5年程度で一旦投入した資金を回収(イグジット)して投資家に戻す必要があるので投資される企業にとっても数年で利益をあげるのを求めることになるが、企業が数年で事業を黒字化するのは現実には簡単な事ではない。
上場企業でも四半期開示を求められたり、機関投資家も腰をすえた投資ではなく近視眼的な投資になっているのが現実。
であれば、長期でお金を託しておける公募投信という形で個人から広くお金を調達すれば「いい会社」に腰をすえて投資することができると考えた。投資家の都合ではなく、あくまでも事業の持っているサイクルに合わせて投資する事で、資金を出す側も企業の成長を実感できるファンドにしたい。
個人が積立で安定的に資金を供給し続けるというのが望ましい姿。
投資家は長期資金を提供し、ファンドマネージャーがいい会社を選別して投資、投資先企業はイグジットを気にせず本業に邁進することで業績を伸ばす、結果として投資家には基準価額の上昇というリターンが返ってくるというサイクルを目指す。
投資というと株価に投資するというイメージがあるが、株価ではなく「事業」に投資したい。
本当の価値を認めるのがまごころ。金融はお金を融通することによりまごころを循環させるもの。
どんな形にするかは未定だが、HP上で投資先企業を開示したい。
BS、PLも合わせて公開していい会社を世の中に紹介することで、投資家側もその企業を利用したりできるコミュニティサイトのようにしたいと考えている。
お金を出すだけではなく、紹介するという形でもいい会社を応援したい。
いい会社とは:
「いい会社」というのはステークホルダーにバランスよく利益が回る会社。
お客様、従業員、株主などどこかに偏っていてはだめ。
いい会社は従業員のモチベーションも高く、結果としていい事業ができている。
法政大学の坂本先生と中小企業の共同研究を行っていると、何十年にもわたって好業績を上げ続けている会社が少数だが存在している。
そういった企業を数値化、指標化するのが目標。
元いたBGIはETFでも有名だがクォンツ運用が得意だった。ファンドマネージャーの新井氏はクォンツ運用が得意なので、いい会社をクォンツ分析して投資できるようにしたい。
投資先の要素としては例えば退職率、女性や障がい者の採用比率などの「人」。
障がいのある人にも適職はあるので、それを生かしている会社。
農業や林業など循環型社会を創造する「共生」。そして世界に通用する技術や感動を与えるサービスをもった「匠」。
結い2101について:
ファンドの規模を巨大にしたいと考えていないので「いい会社」を選ぶ事ができる。
普通の投信が組み入れないような中小企業をカバーする。巨大な資金を運用しようとするとどうしても大きな会社に投資することになってしまうが、そうはならない。
資産形成:お金を増やす
社会形成:投資によって豊かな社会をつくる
こころの形成:本当に人に求められている事業を応援することによる学びや心の豊かさというリターン
結い2101では、資産形成+社会形成+こころの形成までをカバーするカルチャースクールのような存在。
毎月お金を払って何かを学ぶカルチャースクールではお金が減る一方だが、そこに投資という要素が入ることでお金が増える。(減るかもしれないが)
レポートは月に一度を予定していて、組入先企業の事業内容紹介などもしていきたい。
投資対象は中小型株が中心で30%程度は非公開株を含める予定。
非公開株はそんなに値動きがないのとキャッシュポジションも持つので中小型株中心とはいえ、値動きはそんなに激しいものにならない見込み。株と債券の間くらいのリターンになるのではないか。
上場企業3,700社、非上場企業5,000社の中から選んでいく。
非上場企業の情報についてまとめたものが存在しないので、そこは色々な書物やクチコミで企業を集めてアンケートを実施した。
その結果を元に良さそうな企業へ訪問し、資金ニーズがあれば投資していく。資金ニーズがなければ紹介など別の形でサポートを行う。
長期投資とサスティナブルな投資の違い:
長期投資は長期的な目線で利益を求めて資金を投入すること
サスティナブルな投資は企業が永続できるように応援し続けること
投資家の仕事はお金を投入するだけに留まらず社会にその企業の存在を伝えることも含まれる。
非上場企業で投資したくなるようないい企業でも資金ニーズがない場合はその存在を社会にアピールすることでその会社を応援する。
事業に投資するという意味ではベンチャーキャピタルとも重なるが、イグジットを強制せず資金を投入したままにするのが違うところ。
非上場の企業が上場しても、そこで株を売るのではなく「いい会社」である限り投資し続ける。
感想:
結い2101はこれまでの投資信託では見られない独創的なファンドだと感じました。
株価が割高になったので売却して現金化するというような事は考えず、あくまでも事業内容に共感して資金を投入して投資先企業と一緒に大きくなろうという性格を感じます。
規模が大きくなりすぎないので小型株への投資ができると話すあたりに、兆円ファンドを目指す他の直販投信との明確な違いがあります。
これまでの長期投資をうたった直販投信各社とも異なる価値観を持った全く新しいファンドです。
バークシャー・ハザウェイがいい会社に投資して持ち続けるのと似ているのではないでしょうか?
バフェット本に「最高経営責任者バフェット」というバークシャー傘下の企業のCEOなどのインタビューをまとめた本があるのですが、きっと結い2101が投資する企業でもそういう本を書くと良いエピソードがたくさんあって面白い本になるんじゃないかと感じました。(結果的に『日本でいちばん大切にしたい会社』のようになると思いますが)
説明会の途中でFMの新井さんが企業訪問から帰ってきたのですが、いい会社だった!とイキイキと訪問先企業での話をしてくれたのが印象的でした。本当に楽しそうで、鎌倉投信もいい会社だなあと思った瞬間です。
投資家から預かったお金を増やすんだというガツガツした雰囲気を感じさせず、静かな鎌倉の日本家屋でゆったりとした投資がなされそうな雰囲気を感じました。
最初のうちは現金比率も高く、コストが割高だとは思いますがそういう小さな事を気にする人はこのファンドには向きません。
鎌田社長も仰ってましたが利益が欲しいのではなくカルチャースクールに参加するつもりで毎月お金を出して、いい会社について一緒に学んでいくというくらいの気持ちがいいと思います。
資産運用や資産形成目的で金銭的なリターンだけを求めるのではなく、社会的なリターンも求めるという意味でミュージックセキュリティーズにも近いと思います。あちらも事業に投資するものですし。
そんな事で、中小型株に投資するひふみ投信とミュージックセキュリティーズのセキュリテで募集するファンドの中間というのが僕の感じた「結い2101」像です。
長期投資をうたっていますが、これ一本で資産形成ができるという類のファンドではないと思うので、無理のない範囲でいい会社を応援したいという気持ちを投資するのがいいんじゃないでしょうか?
だから、鎌倉投信のコピーが「あなたの資産を増やしましょう」ではなくて「いい会社をふやしましょう」というコピーなんだと思います。
そんな訳で資産形成中の僕にとってこのファンドは投資の中心的存在にはなりませんが、毎月ちょっとずつ投資していくのがいい関係だと感じました。
そして鎌倉投信で使っていた丸吉日新堂印刷のペットボトル再生紙の点字付きエコ名刺、僕もブログ用個人名刺をここにお願いしたいと思います。
雨の中外で出迎えたり、見送りまでしていただいた鎌田社長、そしてあまりお話できなかったですが新井さん、どうもありがとうございました。
また、機会を見つけて訪問させていただきます。