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"いい投資"探検日誌 from 新所沢の過去ログ#1(2003年7月〜2012年3月までの記事)

ゲイツとバフェット新しい資本主義を語る

ビル・ゲイツウォーレン・バフェットが新しい資本主義について語り合った対談本かと思いきや、本の構成は最初に2008年のダボス会議ビル・ゲイツがスピーチした内容、そしてそこで語られた創造的資本主義についてゲイツとバフェットの対談が書かれて始まりますが、その後は各界の著名人による創造的資本主義への寄稿をまとめたものです。

各人がそれぞれ自分の想いを寄稿した論文がありますが、著者も最終的なまとめをしていないのが特徴的です。

創造的資本主義とは何かというと

・自由市場システムには不備がある

・需要に対して技術革新を目指しているのみであり、貧困層の「ニーズ」には対応できていない

・純粋な資本主義では裕福な人に対して働いた方がインセンティブが高くなるため、貧しい人に向けて働いた際のインセンティブを生み出す必要がある

・創造的資本主義とは利益と評価という二つのインセンティブにより自分の利益と他人への利益を同時に刺激する新しいシステム

という事になり、企業のCSR活動をもっと現場寄りに発展させようという試みと言えそうです。

ビル・ゲイツの提案に対してノーベル賞経済学者3名、オバマ政権の国家経済会議委員長のサマーズ、クリントン政権の元労働長官のライシュなどそうそうたるメンバーが喧々諤々と意見を寄稿し合います。

賛成派、反対派それぞれの言い分をもっともだなあとか、そうか?なんて考えながら読み進めるのが楽しいです。

僕個人の感想ではビル・ゲイツがビル&メリンダ財団で途上国に向けたワクチン製造に注力したり、社会活動に企業的な考え方を持ち込んで効率的に結果を出す事を求めるといった新風を吹き込んだ事に手応えを感じての提案なんだろうけど、企業が社会活動に力を入れるよりも社会活動家に対して企業的な考え方を取り入れる方向に進んだ方がいい気がしました。

企業の本分はあくまでも利益を生み出す事業だろうから、「評価」という新しい指標が仮にうまく機能したとしてもそんなに社会活動に対して本気で取り組まない気がするんですよね。であれば、より真剣に取り組んでいる人たちに企業的な効率的オペレーションを持ち込んだ方がいいんじゃないかと。

確かにそもそも企業が貧困層のニーズに答える製品を開発してくれないことには始まらない分野があるので、その方面では奨励金のようなものを出して開発を促進する必要があるでしょうけれどもね。

ちなみに、この本の中でアメリカの所得税をもっと累進課税するべきだという意見が出てくるのですがアメリカの2005年における最も裕福な1%の世帯がアメリカ全体の総所得の21.8%も受け取っているそうです。これはアメリカの標準的な世帯の22倍も稼いでいる事になります。

更に、その中の1%(アメリカ全体の0.01%)は8.94%も受け取っているというデータもあるという事です。(2004年のデータ)

こちらは標準世帯の89倍ととんでもない数字です。

ちなみにフランスの場合は上位1%の所得はフランス全所得の1.62%、欧州で最も差があると言われるイギリスでも4.72%という事ですので、アメリカの場合いかに富が富裕層に集中しているかがわかります。しかも納税額は標準世帯の1.3倍程度だそうです。

収入は22倍で税金は30%増ってなんなの?って思います。

社会貢献云々の前にアメリカはとにかく所得の再配分について真剣に取り組む必要があるんだろうなと感じました。