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"いい投資"探検日誌 from 新所沢の過去ログ#1(2003年7月〜2012年3月までの記事)

年金資金の商品インデックスの買い持ちは投機か?

アメリカの議会で年金基金が商品インデックスファンドを買い持ちするのは投機にあたるのか?議論が激化しているそうです。

年金基金の商品インデックス・ファンドの買い持ちは投機か―業界で議論激化(HFK)

アメリカ上院議会では機関投資家のインデックス・ファンドの買い持ち戦略それ自体が投機だと断定しているのに対して、年金基金側は商品投資は機関投資家がインフレヘッジの手段として伝統的に利用しているもので、昨今の商品価格つり上げには加担していないと反論しています。

6月8日付の日経ヴェリタスでも「食料高が止まらない」という特集記事が掲載されていて、アメリカ上院公聴会での発言が話題になったマスターズ・キャピタル・マネジメントのマイケル・マスターズ氏がファンド批判派、CMEグループ マネージングディレクターのロバート・レイ氏がファンド擁護派としてそれぞれコメントしています。

マイケル・マスターズ氏のコメントから

・問題は商品先物市場で買いポジションを長期保有する商品指数ファンドにある。

・指数ファンドは小麦先物市場で130億ブッシェルの買いポジションを持っており、これは米国民の2年分のパンやパスタを賄える量だ。

・商品は債券や株式と違って在庫ベースの市場で、先物価格が現物価格に結びついて生活ギッジュ品の価格上昇につながる。誰も朝食に債券や株式を食べないが小麦やトウモロコシは食べる。

ファンドの資金流入で市場の流動性が高まるという利点には、機関投資家が商品市場に参加してくるようになった5年前以前にも流動性に問題はなく、商品先物市場に商品インデックスの流動性は必要ない

ロバート・レイ氏のコメントから

・古典的な需給の問題。中国とインドだけで20億人もの人が一斉にタンパク質の消費を増やしていて、家畜に与える穀物の需要が一気に膨らんだ

・天候の問題での輸出規制やエネルギー関連では米国でトウモロコシの3割がバイオ燃料に消費されるようになったのも問題。

・指数ファンドの市場に占める持ち高も過去5年は30〜35%程度に推移していて持ち高の総額は増えているが実需も同様に増えている

実際に、指数ファンドの買い持ちが全体に占める割合を示したグラフも掲載されていたのですが大豆やトウモロコシは2006年から2008年4月までの間で20〜30%の間で推移、トウモロコシは50〜30%と幅はあるものの、確かに一定の幅を超えてはいないようです。

ブッシュ大統領が食料価格の高騰の原因に中国やインドなどの新興国での実需増加を原因と発言したことに対してインドなどからバイオエタノールなどのエネルギー政策の誤りが問題だと反論が出たりと、意見は色々あるようです。

もちろん市場の価格形成は色々な要因が重なった結果ですから、一概に誰が悪いとも言えないのでしょうけれども。

個人的には商品はあくまでもインフレヘッジ商品として存在価値はあるものの、長期的に見ると株式の方がリターンが大きいし、商品のボラリティの高さも気になります。長期買い持ちであればボラリティも均されますが、それは株式も同じ。

年金基金のような本来長期投資家であるべき存在が、四半期や1年といった短期でのリターンの成果を問われてしまうようになった為に、分散投資の一環として株や債券との連動性の低い商品市場への参加を促されたのだとしたら、本来の長期投資の精神に戻って十分な市場規模のある株式や債券市場で運用をして欲しいと思います。

商品インデックスで主力構成商品となる原油についてはそもそも石油が枯れる日が近づいているという観測からの価格上昇という面があるようなので、これはまたの機会に。