Commons Executive Outlook シリーズ 第一回 ローソンの新浪社長のお話を聞いてきました。
コンビニというと決められたオペレーションを末端まで徹底して効率化した店舗運営というイメージでしたが、現場力を活かしつつもイノベーションを求めて変化に対応していくローソンの強さを知りました。
ナチュラルローソンなどを展開している理由についても勉強になりました。
特に、30〜40代にクリティカルな判断をさせる地位につかせ、現場からミドルマネジメント、そしてトップマネジメントとやることが明確化されていて人材育成のいいパスが出来ていると感じました。すぐにはうまくまわらなかったが、続けることで変わったという事で、こういった企業文化の変革にはどんな会社も時間が必要なんだという点も勉強に。
あとは、商社出身という事で商品力に力を入れていて、そのための原料調達を重要視していると感じました。
なにより、自社の事業を前のめりになって熱く語る新浪社長が素敵でした。
※以下は自分のメモを基に書いていますので、発言内容と異なる場合があるかもしれません。ご了承下さい。
新浪社長:
津波と原発でゴーストタウン化しないように加盟店オーナーさんに店を開けるようにお願いしたら地元のためにと開けてくれた。
東京では物が足りずに2〜3週間後に大クレームをいただいた。
3週間目には被災地の子どもが甘いものを求めているという事でデザートを価格を下げて提供したり、小学校の学校給食をローソンが無償で出したりといったサポートも。
コミュニティが存在しているからビジネスができる。
コミュニティを復興することがビジネスの為にも大切であるという考えで行動した。
ガソリン不足になったが加盟店さんに聞いたら京都にタンクローリーを持っているオーナーさんがいたので貸していただいた。
製油所に行けばガソリンをいただけるように交渉し、給油施設としては日本郵政さんにご協力いただいた。
こういう事ができるのも日頃のビジネスでの協力体制があるからこそ。
本部は現場に対して「コストを考えるな」と言ってあげると自由な発想からイノベーションが起こる。
コストを考えなければ突飛なアイデアが生まれて実現することは多い。
USJからガソリンを融通してもらうというのは平時では出てこないアイデア。
社員の力を最大化するにはいろいろ重しを外してあげる。
突飛なアイデアといっても、あまりにもひどい事はしない。そこは暗黙知がある。
チェーンオペレーションには欠点がある。
変化に対応するには一人ひとりが考える必要がある。
ROEが現在は13%だが3年後には15%、5年後には20%を目指している。
日本型企業の理想像と思うが、長期資本が足りないのでは?
新浪社長:
欧米では短期投資資金が多く、リーマンショックのような事が発生した。再発も懸念される。
サスティナブルインベストメントという言葉があるが、投資家は待ってくれない。
そこに長期的資本の必要性を感じる
現場力について
新浪社長:
平時においては現場力は役に立つ。経営陣は調整をすれば良い。
有事には現場で心にスイッチが入った状態になると、それを本部は許容する必要がある。
ローソン以外の会社でもできるか?
新浪社長:
オペレーションが強くなるとイノベーションが起こらなくなる。
現場はコンサバティブ。そこからイノベーションは起こらない。
経営層は高所から危機などを見通す。
天守閣の下の世界ではまさに現場力の世界。ただ、遠くにある危機の気配は察知できない。
ミドルマネジメントは一段上から迫り来る危機を見通したり、変化への対応をする。
トップマネジメントは更に上から見つめる。
オフザジョブトレーニングの最後に議論したりする。
例えばコンビニに対する楽天の驚異など。現場では同業他社への対策しかみえていない。
ローソンでは道州制を導入し、ゼネラルマネジメントを行わせている。
すぐにはできないが、自分自身がマネジメントを面白いと思うような人が育っていく。
30〜40代でクリティカルな意思決定を行えるように場を与える。
もちろんそのために事前準備は必要。
真剣と竹光では違う。
上下の距離感は小さいほうがいい。
直感というのは常に考えた結果出てくるものであるから有効。
ぼーっとしていて思いついた直感はNG
コモンズ吉野さんから:
コモンズでは30銘柄に絞り込んでいる。小売ではローソンかファーストリテイリングと思った。
ローソンを選んだのは配当が多いからという要因もある。下値抵抗力がある。
コンビニはコンビニとまとめて見られるがローソンは他とは異なる。
続けることが大事だが、変化しながらというのが難しい。
山梨大学のローソンのように徹底的にローカライズされた店舗などもある。
隣にはセブンイレブンがあるが、学生はおしゃれなローソンに来るようになる。
新浪社長:
生鮮コンビニなどにも力を入れている。
コンビニの利用者は圧倒的に20〜30代の男性が多い。
小売と外食で146兆円の市場規模があるが、コンビニはそのなかの5%に過ぎない。
ローソンは5%を外に広げようとしている。
生鮮コンビニの派生では例えば余った野菜を冷凍する工場を作ることも検討している。
生鮮コンビニをやってみて、一年中同じ味の野菜が生産されることのおかしさに気づいた。
国内市場にはまだ可能性があると考えている。
また、病院内にも出店していて国内シェアは70%。
ローソンは変化するために低成長なので、代わりに配当は高くしている。
メーカー機能を持つのも特徴。
小売の世界では余ったら引き取らせる慣習がある。
逆に足りない場合はすぐにもってこいと。
短期的にはいいかもしれないが、無理のある構造。
ITコストが下がったことでCRMがしっかりできるようになった。
購入動向をしっかり分析できるので、原料の仕入れにも役立てている。
ローソンは原料の調達に強い。
プレミアムロールケーキなども生乳は北海道のよいものを買っているし、小麦粉もケーキ屋さんが使うような良い物を購入して作ってもらっている。
いいものを作れば売れる。
会場から:
コンビニが社会インフラの仕組みも担うようになってきたと思うが政治との絡みはどうか?
新浪社長:
コンビニは規制緩和で成長してきた業態なので自由でいたい
会場から:
街づくりに対する話を
新浪社長:
ある地方では大きな駐車場がある店舗に郵便局を呼んできた。郵便局は駐車場がないので地元の方は不便に感じていたのが解消された。
また、ある地方ではケーキ屋さんがないという事でローソンがおいしいスイーツを提供している。
店舗デザインは現場にまかせている。LAWSONというロゴさえあれば自由に。
新潟にはアルビレックスローソンという全部アルビレックスに包まれた店舗もある。
コンビニはとにかくリピートしていただくのが大事。
ローソンは本部のロイヤリティが最も低いコンビニ。
会場から:
色々やることが多く、人件費が限界にさしかかっているのでは?
新浪社長:
例えば収納代行業務などはそのついでに買い物をしていただけると思って始めたが、実際にはそんなことはなかった。
収益だけ見たら止めたい事業と言える。
コンビニは価値あるものを提供する場。細かい分析ができるようになったことで一部発注をAI化したりしている。(日用品など)
そういった事で現場に時間的余裕を生み、心の余裕がある状況にしたいと考えている。
会場から:
電力問題について
新浪社長:
ローソンでは1,500店舗をLED化した。これを年内には全店舗へ展開していく。
新しい技術を積極的に取り入れていく。金額は高くつくが(通常6,000万円程度の出店費用が倍以上かかった店舗も)、最初にやるとノウハウが蓄積されるし、技術を持った企業も声をかけてくれるようになる。
大学は研究する機関なので、いい技術がたくさん眠っている。それを現場に掘り起こすと大学も喜んでくれる。
会場から:
ポンタを導入した経緯 Tカードをやめたのは自社で分析したいから?
新浪社長:
できるだけ色をなくしたシステムを導入したかった。
ポンタは自社で色々と分析できるのでTカードから切り替えた。
銀行業への参入はなかなか厳しい
会場から:
新入社員雇用において院卒の地位が低いことについて
新浪社長:
ただ勉強してきただけという人では魅力がない。
例えば青年海外協力隊に行ってきたという人からはオーラが出ている。そういった人であれば積極的に採用したい。
また、外国人の採用も積極的に行っているが他者も入ってきたので厳しくなってきた。
会場から:
オーナーフランチャイズの人材育成について
新浪社長:
20〜40代のオーナーさんに頑張って欲しいと考えている。
既存のご高齢のオーナーさんは過去の成功体験に縛られていることもあるので、代替わりを要請したりもしている。
これからの社会をになっていく若い世代に安定した職を提供することが重要。
直営店ではどうしても甘えが出てしまう。加盟店は一国一城の主という事で全く意識が違っている。
会場から:
グローバル展開について
新浪社長:
現在は中国に進出している。
現地のコンビニはコンビニの外側だけ真似してバックヤードや物流などはうまくまわっていない。
そのため、赤字企業だらけで驚異には感じていない。むしろ日系コンビニの方が驚異。
現地での違いとしては食文化。上海は違うが、北京、大連、重慶などになるとはっきり出る。
中華料理同様暖かいものをもとめる。肉まんが売れる。
商品力を伸ばして展開していく。日本で三年程度育てて中国で活躍していただくことも。
会場から:
ローソン思想の展開について
新浪社長:
オンザジョブトレーニングとオフザジョブトレーニングの両面展開
ローソン大学を開校して教育を行なっている。そういうところから暗黙知の部分が。
とにかく考えろというフレームワークを叩き込む。
そうするととんでもないことは起こらない。
ただし、ケアレスミスや同じ失敗はしっかりと怒る。
会場から:
経営者の引き継ぎについて
新浪社長:
次の経営者は競争。
道州制をとっているのでそこのトップや営業担当役員などから。
会場から:
おすすめ商品は?
新浪社長:
浪そん亭。弁当の新ブランドとして女性の方向けにナチュラルローソンの技術を使っている。
会場から:
だめだと思ったらやめることについてもう少し詳しく
新浪社長:
事業は成功するまでやりきる。ただし、個別プロダクトでは数字の面でも明らかに失敗であれば潔くやめる。
例えば紅鮭弁当というのを自分が着任した当時、自分の指示でつくらせた。しょっぱい塩ジャケをのせた弁当は売れると言ったのだが、実際には全然売れなかった。ただ現場は新社長にそんなことは言えず、だまって廃棄していた。
それを数字で見たり、知り合いの経営者からおいしいけどこの歳になるとしょっぱいと指摘され、止めた。
会場から:
店舗がお客様を惹きつけるには
新浪社長:
基本の徹底をお願いしている。
「心のこもった接客」「キレイに」「良い商品」
そうすると店舗に気が宿る。