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"いい投資"探検日誌 from 新所沢の過去ログ#1(2003年7月〜2012年3月までの記事)

西武鉄道インサイダー取引疑惑のえげつなさ

過去40年にも渡って西武鉄道株式の保有数について隠蔽していた親会社のコクド。堤前会長の辞任会見で明らかになったこの事件、公表する前に超過保有分の株式の売却を済ませてしまったも問題(インサイダー取引の疑い)だったのですが、悪どいことに取引先企業に売却する際に売却理由を偽っていたこともわかってきました。

堤会長自ら株式の購入を持ちかけられた小田急電鉄では「大株主の株式保有数が9月末の時点で東証の上場基準をオーバーする恐れがあるので上場基準を維持するために取得して欲しい。他の企業にも取得を依頼しているので9月末にはクリアできる」と説明されていたそうです。

・・・「9月末の時点でオーバーする恐れがある」ですか?40年もオーバーし続け取るやんけ!

小田急と西武は箱根の活性化を目指して昨年12月に業務提携をしていて、その関係でこのような話を持ち込まれたようですが、結局260万株を約30億円で購入したそうです。

こんな感じで堤会長や営業が取引先に株式の取得をもちかけ、サントリー(260万株約30億円)、ニッセイ同和損害保険(80万株約9億円)、三菱電機(20万株約2億2000万円)、電通(17万9000株約2億円)、サッポロビール(10万株約1億円)などと当時の時価相当額でどんどんコクドとプリンスホテルの保有株を売却していきました。当時1200円-1000円程度だった西武鉄道株式はこの不祥事が明らかになったのが原因で10/20現在548円と半値程度まで値下がりしています。という事は小田急サントリーは15億円相当の損失を抱え込んでしまっていることに。コクド、えげつなさすぎ。

中には経営の透明性向上のためという理由で売却を持ちかけられた会社もあったようですが、こんな事になってしまっては、どこが経営の透明性向上だ!とはらわたが煮え繰り返る気持ちでしょうね。

コクドは8月17日以降7000万株以上を20社以上に売却しています。当然のことながら、これらの企業は騙されて株を買わされてしまった為、損害賠償訴訟を起こす構えのようですが、取引先を騙して株を売却するなんて今後の西武グループとの取引関係に亀裂が入りそうなことを何故やったのか理解に苦しみます。

ちなみに、堤前会長は10月13日の辞任会見で「(問題を)いつ知ったのか」との報道陣からの質問に「ひと月もしませんか、まだ。2週間ぐらいで各社にお会いしたり電話でお願いした」と答えていました。けれども実際にはサントリー小田急には9月上旬に株式取得の依頼を自らが出向いて行なっており、これも嘘だった事が明らかになってます。さらに、コクドが実質保有していた個人株主名義の株には堤前会長の名前も入っていて、これまで81万株を保有しているとされていた堤前会長の株式保有数が訂正後には36万4000株〜41万5000株となっており、自ら名義貸しをしていた事になります。さすがに、自分の保有株が違っていたら変だと気付きますよね。

報道陣からの「即座に発表すべきでは」との質問に「ちょっとその認識がなかった。基準に触れるから、発表するまでに売却してほしいと、売却すれば基準に触れないという認識だった。そういうことも含めてちょっと甘かった」と回答していた堤前会長。ちょっとどころじゃなく、考え方が甘すぎませんか?

まるで三谷幸喜さんのシチュエーションコメディのようにその場しのぎの対応をしてますし。笑える話じゃないところが違いますけど。

今まではコクド側が不利な事実(過少記載)を相手に伝えずに株式を売却し、後から起こるであろう損失を回避したのではないかという意味でのインサイダー取引疑惑の話なのですが、実は今回のインサイダー取引疑惑はこれだけでは済みません。

これらの取引企業への株売却は市場を通さないで直接株式の売買を行なったのですが(いきなりこれだけの株が市場を通して動くと何かあるとバレてしまうので)、何故かその時期に市場でも急に西武鉄道株の取引が活発に行なわれるようになっていたんですね〜。

たぶん、この事実を知った人が発表されれば株価が下がると読んで自分の株を売ったり、空売り(株価が下がれば儲かる)を仕掛けたのではないかという意味でのインサイダー取引疑惑も起きていて、こちらも調査中です。

40年にもわたる株式保有者の虚偽報告に始まり、公表前の売却に伴うインサイダー取引疑惑、不自然に市場取引高が膨らんだインサイダー取引疑惑と日本の証券史上もっとも悪質な事件になるのかもしれません。

それなのに、コクド側は西武鉄道上場廃止になるとは思っていないとまだ強気な姿勢を崩していません。その自信は一体どこから来るのか・・・。